―奪われたもの―


赤羽は今、盤戸高校の応接室にいた。普段、用事がなければ踏み入れることのない重苦しく仰々しい一室。真っ黒い革のソファーに腰掛けて、目の前にはスーツを着た大人の男性が二人。何か重要な交渉を行っているらしい、赤羽も相手方も真剣な顔つきで、しかし交渉が進んでいくにつれて大人二人の表情はどんどん苦しいものに変化していっている。

その大人二人は関西にある帝黒学園アメフト部のスカウトマンだった。
そして交渉の内容は赤羽の転入について。

一度は転入が決まっていたのだが、突然土壇場になって赤羽側から断りを入れる連絡が舞い込んできた。まさかと焦った帝黒学園側は、再度スカウトマン二人を東京まで派遣して、一体どういうことなのか…説得を前提にここ盤戸高校応接室で赤羽と顔を合わせているのだ。

けれど赤羽の意志は固く、どれだけ赤羽にとって優位な条件を持ち出しても全く心が揺れ動く様子もない。完全に拒否の姿勢だった。帝黒学園側も皮肉のような言葉まで持ち出し、何とか考え直してもらうよう説得を試みるが、赤羽の頑なな態度を見ている限り、この交渉は決裂だろうと思わざる得なかった。

帝黒側の卑劣な大勢の選手の引き抜き陰謀を知った赤羽にとって、もう選択の余地などない。そんな裏側を知らず、引越しが決まっていたとはいえ一度は良い返事をしてしまった自分を赤羽は責め続けている。

仲間だと思っていた連中に一斉に裏切られ、意地でもここにたった一人残る決意をしたあの男の胸中を思うと赤羽の胸が痛んで仕方がない。その者の為にも、自分は何としてでも…例え半年間の出場停止のハンデを背負うという悪条件がそこにあったとしても、盤戸に戻らなければならなかった。

「申し訳ありませんが、もう決めたことですので」

そんな相手側からすれば冷徹に感じる赤羽の冷静な声。
きっともう引き止めることは叶わないだろう。

ならば…と、帝黒学園は赤羽に見えない位置でグッときつく拳を握り締める。そしてスカウトマンのまだ若い方の男が立ち上がり、ドアの方へ向かって、開きっぱなしであったドアを静かに閉める。突然のそんな身隠しのような行動に赤羽は眉をひそめる。

「何故、ドアを?」

「赤羽君、君の意志が固いことはよく分かった、きっとこれ以上我々が何を言ったところで音楽性が合わないと言い張る君は首を縦には振らないだろう、残念だが諦めざるを得ないようだ、しかし…既に君の転入手続きは済んでしまっている、例え君が頑なに拒んだとしても我々が学校側にそれを伝えない限り君は盤戸に戻ることが出来ない」

「………仰る意味がよく理解できませんが」

交渉が決裂してもこのまま一筋縄ではいかせてくれない帝黒学園側の不遜な態度にも赤羽は動じず冷静に事を見極めている。つまりタダでは転入取り消しを行わない、そんな言い方だった。
そして案の定彼らは…

「条件がある」

そんなことを口にする。
確かに今回は赤羽が一度済んだ転入手続きを一方的に破棄したようなもので、そんな展開も予測しなかった訳ではない。けれどその相手側が提示してくる条件までは流石に赤羽でも読めやしない。しかしこの期に及んでまだそんな悪あがきをするとは、赤羽は心底呆れていた。

「フー…、まだ僕に何か?」

「そんな難しく考える必要はないよ、ちょっとした取引を行うだけさ」

妙に軽快にそんな言葉を吐かれるが、それが余計に不審感を煽る。元より相手のそんな条件などこちら側が呑む必要があるのか、不誠実な態度を取ったのは帝黒学園側だというのに。だが常識では考えられないような真似もできる相手側にとって、これくらいの条件提示は当然だと思っている可能性か高い。

「言っておくがこの成立した話を一方的に棒に振った君に選択肢はない、盤戸に戻りたいと願うなら否が応でも取引には応じてもらう」

「まず、取引とは?念のためお話をお聞かせ願えますか」

半脅しに近い言葉を投げかれられてもまだうろたえる様子のない赤羽、だがどうも相手の様子がおかしいと自然と警戒心が強くなる。そして若い方の男が何も言わず立ち上がり、赤羽のすぐ側まで移動してくる。ジッとその位置から自分を見下ろされて不快感を覚えた。気がつけば肩に相手の手がポンと置かれ、また赤羽は強い不快感を露にする。思わず手で払いのけてしまいたいほど。

「話を聞く必要なんてないよ、君はただ大人しく僕たちの言うことを聞いていればいい、こんな不利な状況で大人に逆らって本来の目的を見失うほど赤羽君は馬鹿じゃないだろう?」

そして二人の口元に不気味な笑みが浮かべられる。更にその目、まるで全身を舐められるようなおぞましい気配を感じる。

「…どういったおつもりですか」

そんな厳しさが滲んだ声を赤羽は牽制する意味も込めて二人を軽く睨みながら言葉にするが、それに対する返答は言葉では返ってこなかった。

突然側にいた男が赤羽の制服のネクタイをシュルッと解きに掛かる。

「!」

そんな突拍子的な行動に赤羽も目を見開いて驚くと同時に、容赦無しに相手の手を振り払う。大体状況は飲み込めた、単純に見えて威厳と尊厳を失わせる大胆な取引を相手側は要求している。

「とても正気とは思えない、貴方方は」

こんな事が世間的に許されるわけもなく、どこまでも卑劣で汚い相手の思惑に赤羽は心底軽蔑した。もう交渉の余地などないとソファーから立ち上がる、そして乱されたネクタイを整えながらドアへ向かおうとすると、また若い男の手が自分の腕を掴んでくる。もうそのまま条件反射で跳ね飛ばしてしまおうと手を構えるが、その前にもう一人の上司と見受けられる男のほうが赤羽の前に立ちはばかる。

「よしなさい、君の運命は今我々と共にあると言っても過言ではないのだよ?盤戸に戻りたいのなら、大人しくしていることだな」

「それが僕に対する脅しだと?」

しかもここは盤戸高校応接室、彼ら帝黒の牙城では決してないのだ。それを承知で暴挙に出ようとしているなら大した度胸だと赤羽は思う。けれど大人の権力を存分に発揮したいのか、しきりに盤戸復帰への交換条件として持ちかけてくる。本当に卑劣な手が好きだ、と赤羽はこんな時でも冷静だ。

「悪い話じゃないだろう、損害を受けたのは君だけでなく我々だってそうなのだから、子供の我がままに付き合ってあげるのも大変なんだよ、分かっているのかね…それを」

いつの間にか前方と後方で挟み込まれる赤羽、後方からも先程突き飛ばされかけた若い方の男がジリジリと迫ってきている。懲りずに再度腕を掴んできて、また赤羽に振り払われる。この者たちは本気だ、本気で人を食い物のように扱おうとしている。

「全てが済んだらちゃんと再度転入手続きをしてあげるよ、約束は守る。なーに…時間は取らせない、ゆっくりしている暇はないからね、さあ…」

「……っ!」

もう軽蔑の言葉すら出ない、だが前方後方から挟み撃ちされた挙句、相手は確実な方法をと策まで練っている。必ず断れない決定的な何かで揺さぶりを掛けてくる、盤戸と自らの身体を敢えて天秤に掛けさせる。

「そんな貴方方に従う訳にはいかない…僕も手荒な真似は好みませんが……」

「随分強気だねー、僕たちは本気だよ?本気で…帝黒を裏切った君にチャンスを与えているんだ、そこまで言い張るのなら帰してあげるよ…ってね」

そして後方の頼り気のなかった男は赤羽の一瞬の隙をついて、その腕を手に取り密かに用意していた紐のようなもので器用に縛り上げていく。勿論不意をつかれたとはいえ抵抗するが、今度は前方の嫌味な笑顔の男に取り押さえられ、赤羽はあっという間に腕を後ろで拘束される。すぐに対処を取らなかったその甘さまで付け込まれた。

「何をっっ、んっ!」

「おっとあまり騒ぐのは利口じゃない、こんなとこ誰かに見つかったら恥ずかしい思いをするのは君だぞ?何も怖がることはない、これが終わったら晴れて君はここの生徒だ」

口を手で塞がれた赤羽だったが、その神がかった両腕を封じられたことによって抵抗の威力は半減以下に抑えられ、その器用な紐捌きを見せた男は後ろから赤羽の身体をそのクッション性の高いソファーへ押しやる。そしてもう逃げられないようにその横向きに倒れた赤羽に自分の身体を押し付けて、早速服を脱がしにかかった。

「別に悪いようにする訳じゃないから、ただちょっと君は大人をからかいすぎたんだよ」

「君の大好きなあの弱小チームに戻るためだ、これくらい平気だろう。我々もそう甘くないよ、君なんてまだまだ子供だ、大人の言うことは聞くものだ」

そんな聞く耳持たない傲慢な理由付けに赤羽が素直に納得などできるはずもなく、どうにか逃れようと身体を捻って、この身体に伸ばされる4本の腕を振り切ろうと抵抗をする。ネクタイは完全に解かれシャツのボタンは徐々に開かれ、白い肌が露にされると間髪入れずそこに手が差し込まれ、赤羽はその忌々しい感触に嫌悪して震えた。
だがまた悪魔のような囁きが耳元に呟かれる。

「いいのかね?そんなに抵抗しても、盤戸に戻りたいんだろう?」

そんな手は通用しない!と頭は必死になって自我を保とうとその言葉を理解したくないと叫ぶ、だが確かにこの者たちの言うとおり自分の身体を生贄に出さなければ本気で盤戸への転入手続きは行わない本心だろう、それくらいはここまで性根が腐っていたら行動に移す。そして一番の悪夢はそのままある程度まで転入を先延ばしにされて、盤戸でも完全に秋大会に間に合わないよう仕組まれること。
今年一年までも人質に捕られている。

「ああ、やはり高校生だね…いい手触りだ、反応もいい」

「っ!……クッ」

赤羽が迷えば迷うほど身体は無理やり開かされその汚い手が素肌を撫で回し、吐き気がする。二人同時に身体を弄られて精神的にも追い詰められる。

―だが、こんな辱めをっっ―

「もういい加減観念したまえ、ちゃんと手続きは行ってあげるからっ」

「…ひっ卑劣な手を…」

「でもさっきに比べて大人しくなったって事はこの取引に応じるって意味じゃないのー?まさか自分の身体方が大事なんて…赤羽君思ってないよね?」

耳を塞ぎたい、だが両手は紐によってがっちりと固定されている。随分と慣れた手つきだったし、用意をしていた時点で元々こうするつもりであったのだ。非常に腹立たしい。二枚も三枚も向こうの汚さは上だった。そして相手の言うとおり、今の赤羽に盤戸を見捨てることなんて出来やしない。見捨てられるのなら最初から断りを入れることもないのだから。

完全にはめられた。

どこにも逃げ道すら作らせないつもりだ。

「お、だいぶ大人しくなったな、そうだよジッとしていたらその内終わる…利口な子だ」

大人である自分達と同じ位置に立ったような顔をしている赤羽を子供だと突き放し、大人の権力に屈服させる。世の中を上手く渡る術だ、上の人間に取り入ることは。

もう選びたくもない選択肢だけが残り、赤羽は悔しさから下唇を噛む。こんな事でしか盤戸に帰ることすらできないのかと嘆く。こんな汚い大人に好き勝手されないと最低限望むものすら手に入らないとは…、確かに子供の自分には踏み入れられない領域はある。勿論こんな事世間に知られたら帝黒側が大変なことになるだろう。
しかし受けた仕打ちの性質により、被害者側は泣き寝入りするしかない。

―だが…何としてでも盤戸に戻らなければっ!―

例えこれからどんな辱めを受けようと、生き残る道を考えるならば不本意でも従うしかない。身体全体が拒絶反応を起こして、容易にそれを受け入れないにしても。男の自分が男二人を相手に身体が奪われる事になろうとも。
昨日、雨の中待ち伏せをしていたあの男のためにも、自分は帰らなければ…どんな手を使っても。

「夢みたいだよ、君とこんなことができるの」

妙に鼻息荒く圧し掛かれ、肌の見える場所は一つ欠かさず舌で舐め回して胸の突起にも刺激を加えられる。

「あっ!…んっ…」

他人の誰にも触らせたことのない箇所を次々と暴かれて、許可をした覚えもないのに自分を屈服させようと大の大人二人が高校生に欲情している。服を捲くられ肩まで露出されて、卑猥な手が伸ばされる。そしてベルトにも手は掛けられ、下腹部すらも晒されそうになる。

「う…っ、うう…っ」

「華奢なように見えて随分と鍛えてるね〜、いい身体つきだ…ゾクゾクするよ」

そんな変態のような言葉が吐かれて、腹筋やら胸板、首筋を吸い付けられる。そして上司を置いて自分一人が楽しむ訳にはいかないと赤羽の上からは移動して、片膝をソファーに乗せながらカチャカチャと身包みを剥がしていく。そして今度はもう一人が赤羽の朱色の乳首を指先で転がし始め突つきだす。硬くなるそこを執拗に攻めてまだ若い赤羽自身の快楽も呼び込んでしまおうと企む。

「っ……あっ…んんっ」

そんな成果はあるのか、頬を赤く染めた赤羽は少しその赤い瞳が潤んでいる。だがこれは悔しさが原因でもあるだろう。下腹部も一気に晒されて中途半端な位置まで制服と下着を下ろされて、そんな恥部を二人に舐めるように見つめられる。視線が痛かった。
早速若い男の方は触ろうとするが上司に止められ、まず赤羽の身体を完全にうつ伏せにさせろ、と指示が行く。つまり高く腰だけを浮かせて顔だけは前を向かせろと言っているのだ。

ろくな抵抗も出来ぬままなすすべなく、相手の思い通りに身体もコントロールされる。いとも簡単に身体をひっくり返されて腰を浮かせられる。両手が後ろだから余計に腰は高く上がる、そして顔はソファーに押し付けられて。
それからゆっくりと二人は前後から赤羽を攻め始め、後ろからは性器を握られ無理に高められ、前からはそろりと怖ろしいものを目の前に出され赤羽は驚愕する。性器を弄られ続けていたから、意識は飛び飛びだったが、これからどんな目にあわされるのかそれだけは安易に予測できた。

「んんっ…んっ、あっ!」

普段から性欲に関してはまるで旺盛ではない赤羽でもこの状況が生み出す淫らな空気には敵わず、また直接触れられていて局部を相手の眼前に晒している恥ずかしさも手伝い、本人の意思とは関係なく身体は昂っていく。そして自分の目の前に出されたものが徐々に自分に近づけられて、ある行為を迫られる。

「さあて…口でお願いしようか」

「っ!」

「このくらいのサービスはいいだろう?わざわざ関西から東京まで朝早くから呼び出されたんだからね、我々は。君に関して随分経費も労力も費やしたよ、これはその償いだ、まさか拒否はしないだろうねえ?」

上司の方も気が乗ってきたのか、楽しそうにいやらしい笑みを浮かべて、赤羽のその整った顔に醜い一物を近づける。ソファーに這いつくばった格好の赤羽だったが、それを口でする為には自ら面を上げないといけない。相手は変なところで自主性に任せてくる。
それと同時に、後方からの性器への刺激に先端からぽたぽたと雫が零れている。更に後ろから手を回されて、懲りずに胸の突起を摘まれる。感じたくなくてもそれは無理な状況だった。

「あ…、やめ…っ」

弱弱しい喘ぐような声で制止を求めても当然逆効果で余計に相手を欲情させる。よっぽどこの若い身体に快感を見出されている。

「腰つきもいいね…、引き締まってて…」

そして男は赤羽の尻をするりと撫でる。びくっと震えた赤羽のその反応も面白がっているのか、カーブを描くその場所を何度も掌で撫でて、悪戯とばかりに中心にも指を当てる。

「っっ!!」

「ああー正直な反応!若い子は素直でいいね」

それから男は何故か一度赤羽の側を離れる。なんだかそれも今更不気味だったが、今は目の前の醜いものが何よりも目障りで赤羽は自身の中にある誇りすらも奪われるのかと躊躇している。なにもこんな無様な真似をする必要はない、とプライドがそれを許そうとしないが、盤戸の転入を口に出されると赤羽はもう何も言えなかった。

―帰るんだ……盤戸に、帰る……っ―

こんな自分が情けないと分かっていながら、赤羽はゆっくりと面を上げて初めて正面からその性器を見る。だが直視も耐えられなくて目を逸らした。

「ほら…ゆっくり口を開けて…」

悲しいが口がその言葉どおりに徐々に開いていく。そして唐突に先端を口先に押し付けられた。思わず吐き気がしたが顔を逸らすことはできなかった。

「んっっ!」

「口を開いて舌を使うんだ、赤羽君ならこのくらい簡単だろう。随分帝黒に来てくれた選手達からも人気が高いようだね、全く今回の一件を彼らにどう説明したらいいんだ、今から気が滅入るよ、これは言ってみれば帝黒を裏切った罰だ」

裏切り。盤戸からも帝黒からも赤羽はその言葉を受ける。とても自身の音楽性に反する言葉だった。しかし帝黒に対しては何の引け目も感じていない。ただ罠にはまってしまったのだ、盤戸に対する純粋な思いを利用されてこんな惨めな醜態を晒すことになってしまった。

「……でも彼らには悪いが抜け駆けだがね、ははっ」

赤羽は先端部分を口に銜えながら、そんな下劣な笑い声を聞いた。だがもう自分も同じ位置まで落とされている、とても綺麗とはいえないこの状態。
するとそんな時、後方を離れていた男も赤羽の元へ戻ってくる。また前後から容赦なしに攻められるのかと思うと心は暗い。

「遅いぞ、いつまで探していたんだっ」

「いやーどうも、でもこれさえあればもうっ」

「…んっ……?」

そんな気になる会話を残し、もうそれぞれの担当へ戻ってしまった二人。一人はフェラを強要し、もう一人は小さな容器を手にしていてそれの蓋を開け中からクリームのようなものを指先にたっぷりと取っている。そしてニヤリと卑しい笑みを浮かべて、帝黒者同士視線を合わせ、それからそのクリームを赤羽の局部に突如塗りこんだ。

「うっっ!!」

口で男のものを頬張りながら、後ろで何か気持ちの悪いものを指ごと中へ塗りこまれている。卑猥な音を立てながら男は楽しそうにそのクリームを丹念に赤羽の内部へ沁み込ませる。何だかとてもむず痒かった。

「心配しなくてもすぐに効いてくるからな、ほんの少しの我慢だ…」

そんな気になる発言を頭上から吐かれて、返事も出来やしないが引き続き口での慰めを求められる。確かな刺激だけがほしいのか、無理に赤羽の髪を掴んで出し入れを行おうとしたり、手はとても乱暴だった。とにかくもう何もせず飽きてくれることを期待したが、その前に赤羽は自身の身体の変化に気付く。なんだか妙に熱くなって、塗りこまれた局部から全身に何かが広がるような気がした。
徐々に興奮状態が強まり、思わず腰が揺れて全身を震わすほど強烈な肉欲が体内に芽生える。

「んっ……んんっっ…ん!」

まともに息を吐き出せないのも苦痛で、脳神経までやられてしまったのか何故かあれほど拒んでいた口での奉仕も恐る恐る舌を使い始めて従順な態度を見せ始める。意識では逃れたいとあれほど思っているのに身体が暴走している。理性を保てなくなっている。
そして奥を指で突かれて、信じられないほど過敏に反応する。熱くて何も考えられないほど快感を得ている。

「早速効いてきたな、本当に素直でいい身体をしているな」

「これで痛くもないはずだから安心して任せてくれたらいいよ、もう気持ちいいだろう?」

「んっ!いっ…一体…何をっ」

「ん〜?離すのはいけないだろう」

赤羽の髪を掴み顔を強制的に上げさせて、まだ口答えするその唇に再度一物を押し当てる。銜えさせて今度は男が自分から喉元まで突き立てる。愕然とする赤羽に追い討ちをかけるように腰を上下させ、更に後方からも執拗に指で過敏になった内壁を擦られて、赤羽は苦しさの一方強すぎる快感に身体が悲鳴を上げていた。触れられなくても膨れ上がった自身がもう既に解放を訴えている。

男は思う存分赤羽の口内を堪能した後、激しい興奮状態にまみれてもう限界が訪れているのか、身震いを起こしながらべっとりとしたものを赤羽のその綺麗な顔にぶちまけた。汚す悦びも感じているのか、その下品な笑みはとても満足そうだった。
赤羽もそんな汚らしい精液を顔中に浴びせられて咄嗟に目は瞑ったが、こんな仕打ちですら今の身体は異常な興奮状態にさせた。これでは相手と何も変わらない…けれど自身の絶頂は止められず、後ろからも前立腺ばかりを攻められて赤羽はたまらず射精した。

「あっ、ああっっ!!……ふっ…うう…」

決して強がれる状態ではなくて、そんな絶頂の瞬間も自身の乱れた表情を隠すことも出来ず、男の卑しい笑みがそんな赤羽を愉しそうに見ている。そのいやらしさに見とれながら、自分の吐き出したものを大量に顔に付着させて快感に震える姿は更なる欲求を抱かせる。

赤羽の顎を掴み顔を自分の方へ向けさせて、本人にしてみれば悲惨な現状を男はじっくりと穴が開くほど見つめる。達してもこれぐらいでは薬のせいで全く足りていないのか、まだ物足りなさそうな飢えた表情を無意識的にしている。とろりと蕩けそうなあの赤い瞳に男は見惚れる。もっと近寄り、その芸術品のような瞳を性欲の対象として見る。

「本当に綺麗な赤色だね、光栄だよ…君のような特別な子に相手をしてもらえるなんて」

陵辱している相手が何を言うのか、反論は脳裏に浮かぶがもう嬌声か湿った吐息しか出てこない。人と見なされないその狂った視線に神経も犯されそうだった。耳は先程からぐちゅぐちゅと指を抜き差しされる音が響いて離れない、全く蒸発しない熱がまだまだ体内で燻っている。局部が激しく伸縮を繰り返しているのが自分でも分かる。

「まあせいぜいキックチームしか残らないあの弱小チームで頑張りたまえ」

「!」

「ああ赤羽君の言うとおり、クリスマスボウルで会えたらいいね〜」

そんな盤戸を侮辱するような言葉をこの状況で吐かれ、まるでそんなもののために身体を張れる君はおかしいとでも言いたげだった。だが恩恵に預かり、二人は締りのない顔をしっぱなしであるが。

―許さない…絶対に、許さないっ―

けれど威勢のいい声も気力も身体から既に失われ、気だけを強く保とうとしても薬を遣われては赤羽は太刀打ちできなかった。勝手にどこからでも快楽を拾ってくる、どんな些細な刺激でも今に赤羽には全て快感に変わってしまう。こんな酷い言葉でさえも。

「じゃあそろそろ……早く済ませてあげないと赤羽君辛そうだしね」

そんな言葉と同時に指が抜かれて、後方の男はカチャカチャとベルトを外し始める。もうそれだけで赤羽の身体は震えた。何かに期待して止まないのだ、全く望んでもいない行為だというのに。

「あ……、あっ…」

「仕方ないから先は譲ってやろう、お前の方が若いからな…早くしたまえ」

そして性急な様子で若い方の男は既に張り詰めた自分自身を衣服から取り出し、そっと先程まで散々指で嬲っていたヒクヒクさせている箇所に宛がう。その密着した感触に赤羽は精神的に取り乱す。盤戸にためにと割り切らざるを得なかったが、いざこの状況下に置かれると恐怖でたまらない。薬に溺れた身体だけが欲しがっている。


2へ続く。




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