―サンタ&トナカイ2―


気恥ずかしいを軽く超えていく感情が湧き起こって、少し俯き気味にしていると「腰を落としてくれ」と声がしてその場にしゃがみ込み胡座をかいて座り込む。もう覚悟を決めて身体でも何でも洗ってもらおうと大人しくしている。すると背中に湯が当てられ、その温かさからホッと息をつくと今度はおもむろに頭上からシャワーが掛けられて、そしてガシガシと結構乱暴な手つきで髪を洗われる。

―…あ、意外と気持ちいいかも…―

髪を洗われる感触は嫌いでなくて文句一つ言わずされるようにされてやる。泡がモコモコ立ち始め目に入らないようにだけ気をつける。お湯で流される時も堅く目は瞑り口は閉じ、最後水気を吹き飛ばす為にブルブルブルッと全身を震わす。

「…犬みたいだな」

するとそんな感想が漏れてきて、トナカイだ…とだけ答えておく。しかし問題はこの後で、何かスポンジのような物で背中を擦られた時コータローは又顔を赤くして、なるべく後ろを意識しないように別の事でも考えていようと様々な出来事を思い浮かべるが、赤羽の手が直接背中に触れた時、その感触に体温に雑念は全て吹き飛ばされてしまう。

―……なんか、おかしな気分になってきたぞ…―

あのサンタが自分と同じく裸で背中を洗ってくれている…何だかこんな店あるよなーとコータローは行った事もないくせに想像だけを膨らませていく。そこへ行けばこんな風に優しく身体を洗われるのだろうか?艶めかしく動く手が自分の熱くなった身体を慰めてくれるのだろうか?

―はっっ!!やべっっ!!!―

少し妄想が行き過ぎたせいか身体が微妙に前屈みとなり落ちつけ落ちつけと自分に言い聞かす。すると肩越しに赤羽の声が聞こえ、またハッ!とさせられながら何だよ!と威勢良く振り返ってやると思いもよらぬ近さに相手の顔はあった。しかも先ほどとは違う、濡れた髪が肌に張り付いて雫が零れ少し頬が上気しておりその鋭く優しい赤い瞳がこちらを見つめていて並並ならぬ色気を漂わせていた。鎖骨のラインもまさに扇情的であった。コータローは思わず言葉を失い又顔の位置を戻し、高鳴り始める鼓動がやたらうるさくて意味がなくても耳を塞いでしまいたかった。

「…どうかしたのか?」

何の事情も知らぬサンタの声がまた聞こえてコータローは適当に答えるしかない。

「別に何もねーよ……」

「……背中は終わった、前も洗うが?」

「ッンなのは自分でやるぜ!!スポンジ寄越せ!!」

慌てて赤羽からスポンジを奪い取り自分で胸元や脇腹など豪快に洗っていく。まあ誰でも前は洗われたくないだろうが今のコータローの心境としては洗われるのが嫌だった…というより、これ以上触れられたくなかったという気持ちが先に働いていた。きっと今後ろでは赤羽が自分の身体を洗っているだろう…だいぶすすがついていたはずだから。

―……やばかった、もう少しで勃っちまうとこだった―

間一髪で難を逃れたコータローは、もう一分一秒でも裸で同じ空間にいる事はまずいと判断し手っ取り早く前半身や脚を洗ってシャワーヘッドを寄越せと手を差し出す。だが渡される事はなく斜め上から湯が当てられる。コータローは仕方なしに立ち上がり適当に後ろから当てられる湯で泡を洗い流し、逞しく筋肉のついたバネのような脚も汚れが落ちて清潔な状態に保たれる。

「よし、全身キレイになったぞ…もう出る」

「ん?本当にキレイになったか?」

だがあろうことか前半身を覗き込むように赤羽が接近してきて、驚いたコータローは思わず両手で赤羽の身体を無理矢理押し退けて、微妙に向かい合う形になってしまった二人…
その瞬間確かにコータローは赤羽の全身を見てしまい、また身体の内側が熱く燃え滾るように疼き出して、もうダッシュで浴室から濡れた身体のまま逃げ出すしかなかった。

ガチャッ!

「コータロー?濡れたままだと風邪を引くぞ?」

そんな自分を気遣う言葉が後方から聞こえてきたがコータローはもうそれどころじゃなかった。とりあえず適当にバスタオルは一枚持ち出してきたものの悠長にあそこで身体を拭いている場合じゃない。はあっはあっと息を切らしながら脳裏に焼き付いてしまった露っぽいサンタの表情や顔や身体が獣の血を呼び起こす。元々トナカイだから獣は獣なのだが、だから余計に理性という代物は多く持ち合わせていないのだ。

「やばい……アイツ、エロ過ぎる…おかしいぞちょっと……」

突如やってきた緊急事態に対処できないままコータローは一人うろたえる。適当に身体と髪を拭いて簡単に服も着るが、しばらく経つと浴室から赤羽も出てきて何だか気まずい。しかも向こうも当然身体は洗い立てで、更に格好がサンタ専用のバスローブ装着だ。真っ赤な生地に白のライン。そこから伸びている二本の足は当然素足のままで、そのバスローブとの境界線に視線を奪われる。

―って!男のそんなのは見たくねーよ!!でもアイツ…なんか男臭くないんだよなあ…線も細いしよ―

だが身体はシッカリと鍛えていて、力だけでは完全にコータローが押し負けてしまう。
ソファーに座っていつものように足を組む赤羽の脚のラインは無駄に艶かしくて、男でも思わずドキリとさせられてしまうほど妙な色香を漂わせていた。しかも本人にその自覚があるのかどうかは非常に判断が難しい…計算しているのか天然なのか…どちらとも取れる言動はさほど頭の回らないコータローにとっては天敵のようなものである。

「コータロー、脚は疲れてないか?」

「…クッタクタだぜ…」

「じゃあ揉んでやろう、こっちへおいで」

「ブッッ!!」

更に何を考えているのか余計分からなくなる一言が飛び出して、コータローはもうグルグルと自分が何をすべきなのか判断がつかず混乱してしまう。けれど赤羽は温厚な性格だけど一度言い出したら引かない頑固な面もあるので断りきれないだろうなあと今回も諦めて素直に従おうと決める。だが問題はそんな事じゃなくて…

―あんまり…近寄りたくねーんだけどな…こうモヤモヤする…―

でも獣の好奇心で少し近寄ってみたい気もしてしまうのだ。

「ほら、ここに仰向けになって寝転ぶんだ」

「………分かったよ」

だが良からぬ雑念は捨ててしまわないと今度こそとんでもない事を引き起こしかねない、とにかくこれはただのマッサージだと自分に言い聞かしてコータローは目を瞑る。自分の脚の上に乗りかかってくる赤羽の気配を感じるとそれだけで心臓がバクバクと早鐘を打ち始める。だから相手の姿は決して見ない事にした。

「…気持ちいいか?」

何だか目を瞑ったままでそんな台詞を吐かれてしまうとますます夜の店の雰囲気が出てしまう。まあマッサージ自体は確かに気持ち良かったが。けれど試練はやっぱり訪れて、足首から脹脛、そして太腿まで手が辿り着いたとき一気に全身に緊張が走った。中心部と近い位置の筋肉を揉まれて思わず触ってもらいたい欲求が頭をもたげる。

―やばいやばいやばい!!!それ以上は触んな!!マジで勃っちまうぞ!!―

こんな所でそれが現実になってしまったら一発で相手にバレてしまう…
止めるべきだと咄嗟に判断したコータローは少し上体を起こし固く瞑っていた目を開けて赤羽の身体を押し退けようとした。だがまた同じ過ちは繰り返されて…

自分か置かれていた状況のやばさを今頃になって気付かされる。
目の前で自分の両脚に跨りながら膝立ちで上半身を倒しながら…一生懸命に太腿を揉んでくれてはいるのだが、その体勢をやや斜め下から見上げる形になってしまったが為、大きく前に膨らんだバスローブの中が完全に見えてしまっている状態だったのだ。
先程も見た綺麗な鎖骨のラインとそして胸部…思わず悩殺されてしまいそうな二つの突起に目が釘付けとなってコータローはそれ以上我慢することは出来なかった。

「ちょっっ!!もう離れろ!!いいからっもういいからっ!」

「??何だ…突然、良くないのか?」

「何だっていいから離れろ!!じゃねーとっっ」

「ん?随分と顔が赤いな…」

しかしこんなに切羽詰った状況でノンビリ構えている赤羽に対し、だんだんとコータローは腹立たしくなっていて、しかもどけ!と言ってもどかずに、よりによって顔が熱く火照っている事を指摘してしまって、もう何もかもが限界だと…身体を起こし自分の脚に乗り掛かっていた赤羽を逆に今度は自分がその場に押し倒して乗り掛かる。

「お前っっ、いい加減にしろよーーーっ!?それわざとかよ!!!」

「っ??」

激情を表に出して力の限り叫んでやるが赤羽は多少驚いているもののキョトン…とコータローからすれば暢気な顔をしている。何から何まで人を怒らせる天才だと思った…だが走り出した列車はそう簡単には止まらず、この肉欲を無遠慮に相手にぶつけてやる。

「世話…、してもらおうじゃねーかっ!」

そしておもむろに身体を洗われている時から気になって仕方のなかった白い肌に正に獣のように吸い付いてベロッと舌で舐め回す。首筋にまるで齧り付くように顔を埋めて、少し戸惑った反応を見せる赤羽を尻目に身体に渦巻く欲望のまま滑らかな肌を堪能していく。

紐を解かないままバスローブの前を乱暴に開け、平たい胸にも顔を埋める。我慢の限界を超える決定打となった薄く淡い朱色の突起を舌で何度も舐め回し弾いて、口に含みきつく吸い上げてやる。

「んっっ!」

するとようやくそれらしき声を上げた自分の主人を、突起を執拗に嬲り刺激を与えながら鋭い獣の視線を向けてやる。戸惑いがちの表情は変わらず少し頬が赤く染まっていて赤い瞳が不安からか少々揺れている。口は固く結んで声を漏らさないようしているのかと思えば、途端甘い吐息と共に喘ぐような声を漏らして、妙に挑発されて気分だった。

「たってきたぜ、ここ」

コータローはさぞ楽しそうにしつこく突起を弄って、硬く立ち上がってきたソレを玩具のように唇で挟み舌先で突いて軽く歯で噛んでやる。唾液で濡らしてピチャピチャと音を立てて、ますます自分の身体が興奮していくのが分かった。

「あ…っ」

胸を酷く攻め立てられて少しその整った顔を歪ませた赤羽は、片手をボリュームのあるコータローの髪の中に埋めて頭部を軽く押さえながら行為には耐えている様子だった。何も…暴れたりだとか行為の停止を求める声も出していない。

―どういうつもりか知らねぇけど抵抗してこねーなら堂々と付け込ませてもらうぜ―

全く止める気のないコータローは、そろりと自分の手を赤羽の太腿に添わせてバスローブで未だ隠れている場所を暴いてやろうと手を滑らせるようにスルスルと上へ押し上げていく。少しずつ露になっていく脚を見下ろしながらペロリと舌で自分の唇を舐める。
そして脈絡なく突然赤羽の脚を掴み、膝を曲げさせて下腹部が良く見えるように大きく広げてやる。

「っっ!!」

「おい、なんで中に何も着けてねーんだ!?やっぱり誘ってたのかよっ」

一瞬にして恥部を晒されて、これにはさすがに赤羽も僅かにだが顔を伏せ羞恥を露にする。だがコータローの問いに「そんなつもりはなかった」と冷静に答えるだけの精神力は残されている。もっと何をするんだと取り乱す姿を想像していたコータローにとっては余り面白くない結果だった。しかし自分の中の欲が消え失せる訳ではないので、相手のそこに躊躇いなく顔を埋めてまた舌先で太腿の裏側をいやらしくなぞり、少し硬くなった相手の熱を手で掴んでやる。

「あっ…、はぁ…っ」

もう気が済むまでコータローは赤羽の身体を舐め回す気でいた。欲情したトナカイは気が狂ったように舌での愛撫を繰り返し息を荒くして、今手の中にある赤羽の性器にも舌を這わす。まるで食物のエキスでも愉しむかのような勢いで過敏になっているそれの味を堪能して横から吸い付き表面を唾液で濡らしていく。

「うっ……ふぅっ…」

直接与えられる快感に堪らず赤羽も身じろぐけれど、自分を攻める男の頭部に置かれた手は震えていたけどやはり引き離す意思はなかった。くしゃっとまだ濡れているコータローの髪を優しく掴んで、まるで撫でるような心の温かい動作を見せる。けれど中心の熱は確かな形を示して強がる余裕はないはずだ。

―…トナカイにこんな事されて悔しくねーのかよ、こいつはっ!―

室内の電気が何も隠す事なくありのままの現実を見せ付けていると言うのに、地位的にサンタの下に位置するトナカイにこんな辱めを受けて、感じる姿は見せるものの嫌がる事はなく…逆にコータローはそれが悔しかった。きっともっと追い詰めていけば必ず赤羽も次第に卑猥に乱れていって、いつしか自分に「やめろ」と慌てて告げてくるはずだ。醜態を晒す前に。

チュウッ…

体液で濡れてきた性器の先端に唇をつけて、その体液ごときつく吸い付く。ペロペロと零さないように舌をふんだんに使い惜しみなく刺激を与えていく。

「はぁっ…はぁ…、あ…っ!」

さすがにココを一心不乱に攻め立てられれば、かなりの快感が伴うのか初めて見せるような表情や声を聞くことができる。またそれに性的興奮を覚えてコータローは執拗に性器を舌や手で擦りつける。ビクビクと震えながらイイようにされて喘ぐ一応の自分の主人は凄く官能的だった。

―クソッ、意外と感じる顔可愛いじゃねぇか…―

いつも大体ほぼ無表情の赤羽だから貴重すぎるこの映像は自然と脳裏に焼きつく。自分が又そんな淫らな表情をさせていると思うと酷く優越感を得てたまらない。先走りが滲んでいる先端を咥え込んで手で棒を何度も扱く。精を吐き出させようと、このいつも涼しい顔をして澄ましているサンタを追い詰めてイかせてしまおうと快楽を与える。

「あ、あっ…はっ…あっっ!んん…っっ」

するとようやく果てた赤羽はぐったりとソファーの隅に寄り掛かって呼吸を整えている。コータローはくいっと赤羽の吐き出したものを適当に拭き取ると上体を起こし膝立ちしながら疲労している赤羽を高い位置から見下ろす。未だ脚を閉じさせないまま醜態を晒させたままでジッと相手の顔を見つめる。

「……随分な格好だな、いい様だぜ、イかされた気分はどうだよ」

「…はっ…はあっ…、続きは…しないのか?」

しかし予想もしなかった返事が返ってきてコータローは一瞬押し黙るがすぐに勢いに任せて激昂したようにその場で叫ぶ。

「んだとっテメー!!本気で犯るぞ!!」

「お前の世話をすると言ったんだ…、好きにすればいいさ」

だがどんなに暴言を吐いても…こんな仕打ちを受けても赤羽は怒ろうともしない。むしろ怒ってないように見せ掛けて実は本気で怒っているんじゃないかと思っても、やっぱり赤羽は怒っていないと感じられる。色気の増したハスキーボイスで何もかもを許すような…誘うような言葉を吐いて、全てを許容すると言う。こんな性欲処理にまで付き合ってくれると言う…
もうどこまで本気なのか理解し難い範囲だ。

しかし本気かどうかは実際に続きをしてみれば分かる事、そこまで赤羽が言うのならもうコータローは遠慮なく(最初からなかったが)雄の本能をぶつけていく。正直、自分の下腹部は破裂してしまいそうなほど大きく膨れ上がって端から我慢など出来そうになかったのだ。

「…トナカイは獣だぞっ、なめてんのか?後で後悔しても知らねーぞ!!」

何故かコータローが自棄になりがちのまま行為は再開される。
開いたままの赤羽の両足を思い切りよく、身体を二つ折りにしてしまうくらいに折り曲げてやってコータローは先程顔を埋めた更に奥へと移動していく。そして相手が何をしたいのか悟った赤羽は一瞬動揺を見せるが、さっきの自分自身が言った言葉に嘘偽りはないと制止の言葉は掛けずにただ羞恥に耐える。


3へ続く。




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