*お年頃* その日はたまたま部活後に南の家へ遊びに行って、ついつい長居をしてしまったのだ。 夕食も食べさせてもらい、なんとなく帰るタイミングを失ってだらだらと南の部屋で寛いでいた。部屋の主も長居に関して特に嫌な顔は見せなかったので東方もついつい甘えてしまったのだろう。 適当にテレビをつけながら二人はぼんやりそれを眺めていると、いつの間にか画面には「金○ロードショー」の文字が映し出されていた。 そして今日の映画は何かと二人とも無言でテレビを見守っていると「となりの○トロ」の文字が…どうやらかの有名なジブリのアニメ映画が始まるらしい。 更に映画が始まると何故か二人はまじまじと見入ってしまい、またまた東方は帰るタイミングを失った。 思わず真剣に画面を見つめ、小さい子供と摩訶不思議な動物との感動物語を二人は堪能した。彼らは根が純粋なので、ああいった映画には弱いのですね。 「は〜、終わった…って今何時!?」 緊張の糸を解いた東方は大きく息を吐くも、瞬時に今自分が置かれている状況に気づき慌てて時計を見た。 すると予想通り夜の11時を回っている。一応自宅には南の家にお邪魔してるとは伝えてあるものの一応中学生という身分なのだから、夜遅くまで外出しているなんて言語道断!顔が老けてるとか…そんな問題ではない! 「やばい!南、ちょっと電話借りるぞっ」 焦った東方は勢いよく部屋を飛び出し、階段付近に置いてある南家の電話の受話器をとった。そして高速で家の番号をプッシュし始めると、ふと隣に人の気配を感じ東方は横目でそれを確認した。 ―まさかト○ロ!?― な〜んてお茶目な想像を繰り広げながら、いつの間にか真横に立っていた南の存在に気づく。 「み…南…?」 全てを押し終えていない電話は自宅とは当然繋がらず、今は意識が南へと向かれていた。 「今日はもう泊まっていったら?遅いし、明日休みだし」 そんな南からの嬉し恥ずかしな、信じ難いがありがたい申し出を受けた。 東方は一瞬リアクションに困ったが、ここは素直に南の好意を受け取ることに決めた。 しかしまさか南から泊まりの許可を貰えるとは思っていなかった。 何故なら彼らは一応友情を超えたお付き合いをしているから。しかも最後の砦は未クリア。ひょっとしてひょっとすると今日が記念日になってしまうかもしれない。 東方はついつい不健全なことを頭に浮かべてしまう。もしその内容が南に知られてしまったら殺されそうだし追い出されそうだ。 「え…いいの?」 「いいよ、別に。寝間着くらい貸してやるし。じゃあ俺先に風呂入ってるから」 淡々とそれだけを伝えて南はさっさと風呂場へと消えた。 そんな思いっきり普通な態度の南を見て東方は、少々残念にも思う。 ―意識されてねー…― そんな度胸…この東方にはないと踏んでいるのか、それともただ天然なだけか、南の本意は分からなかったが東方は逆に胸に燃え上がる炎を抑えられなかった。 「…覚えてろよ、南…」 そんな雑魚キャラの捨て台詞まで吐いちゃって… とにかく自宅には慌てて連絡を入れる東方だった。 東方が風呂を借りた直後は、きちんとベッドの隣に布団が敷かれており、南は大あくびを零しながら、いかにも眠そうな表情を見せていた。 しかしそんなことはお構いなしに覚悟を決めている東方。相手がベッドに沈んだその時が戦闘の合図なのだ。 「あーねむ……映画観た後って目が疲れるよなあ…今日は思いっきり睡眠取るから、明日お前が先に起きても勝手に起こすなよ」 しかしそんな南の申し出に東方の思惑は…今日思いっきり睡眠など取らせはしない…と野望を抱いていた。 正直そろそろ我慢も限界なので(若いから)是非南には協力してほしい。いつもみたいに激しく拒んでほしくない。拒まれるとやっぱり相手の意思を尊重して自分の暴走が止まるから。 でも今日は出来るなら走らせてほしい。 「んー…もう限界、俺寝るからな。お前もさっさと寝ろよ」 うん、俺も限界。と東方も同時に下半身の疼きを感じた。 そして南が寝床に着くと、細胞が活性化した東方は南の真上に身を乗り上げた。 南は突然異様な気配を感じて一度閉ざした瞼を再度開ける。 すると放送ギリギリの東方の顔がそこにはあった。 「ギャーーーーー!!」 あまりのヤバさに思わず声を大にして叫んでしまう南、階下には親と弟が寝静まっているというのに。 「南、シーッシー!声が大きい!!」 東方は慌てて南の口を手で塞ぐも根本的な原因は自分にあったことまでは頭が回らなかったようだ。 「ななな何だ、何だ、急に?何か用か!?」 「うん、用がある。今日こそ南……逃がさないからな」 驚きのあまり硬直する南に、欲望に駆られた哀れな子羊(子狼?)が一匹。 そんな子狼は相手の反応など気にも留めず、ガバッと顔を首元に埋めた。 まさに食われかけの南。絶体絶命の大ピンチ。 「わっ、ちょっ、お前はまた懲りずにーっ!嫌だって言ってるだろう!?」 必死に引き剥がそうともがく。だが東方も目が多少血走っていて理性が微かにしか残っていない様子だった。 「何で?何で嫌なんだ?俺たちこれ以外のことは結構色々凄いことしてきた(つもり)のに、何で最後の最後だけっ」 「そう言われても嫌なものは嫌だ!離せよっ、家族に聞こえるだろうっ」 (一応彼らは小声でやり取りしてます) 「南が協力してくれたら手荒なことはしない!大体今日泊まっていいーなんて軽々しく言っておいて、今更これは酷いんじゃないか?」 完全にケンカモード…もう手のつけようがございません。 再び南の首筋に唇を押し当てて、いやらしく舌で舐め回す。そして幾ら手が早いと言われようが寝間着の中に手を差し入れ生肌を無遠慮に撫で上げた。 「ヒャッ!わわわっ、いい加減にしろ!どこ触ってるんだよ」 「どこって乳く…」 バキッッ!! 「言わなくていい!!」 顔面をグーで殴られ、東方の強引な手は少し緩んだ。どうにも色気を出してくれない南に今日も雰囲気負けしそうな予感がする。 こうして自分は一生南と繋がることはなく清いお付き合いを進めていかなくてはいかないのか…恐怖の幻想はまさに現実になろうとしている。 「そんなに…そんなに嫌か南、もう俺のこと嫌いなんだなっ、早くアッチ行け変態!とか思ってるんだろう!?」 「いや…そこまでは…さすがに、ちょっと落ち着け」 「落ち着いたって南はただ離れていくだけなんだー、ワーン!」 きっと嘘泣きであろうけど、今の東方の姿は誠に哀れであった。ちょっと可哀想に思えてきた南…頑なに閉ざした心のネジがついつい外れてしまいそうだ。 「…まあその…確かに拒む理由が一つだけあるんだけど………聞いても笑わないか?」 ―えっ?拒む理由?― 聞き捨てならない南の言葉に反応して、素早く顔を上げてジッと見つめる。やはり嘘泣きだった模様。だが南はあえて知らん振りをした。とにかく自分の気持ちを伝えたい一心で、上に圧し掛かる東方を押し退けてベッドの上に正座する。 「その…何て言うか、小さい頃からの夢があってさ…」 真面目に語りだした南の前で東方もとりあえず正座した。向き合いながら真剣に相手の話を伺う。こんなに思い詰めた顔で南が本心を打ち明けてくれているのに、東方に何故笑うことが出来るというのだろう。そんな失礼なこと出来るはずがない。 ―小さい頃からの夢?…初耳だな、何だろう?― 先程まで爆発してしまいそうだったあの疼きも鎮火へと向う。東方だって年中盛っている訳ではない、無理強いなんて所詮出来ない男だ。多分。 目の前の…説明するだけで精一杯な南は確かに可愛いなと不覚にも感じてしまうが、それはそれである。どんな南でも受け入れる自信はある。 だからこんなに真剣な南の一大告白は大歓迎…のはずだった、はずだったのだが… 正直に顎が外れるような仰天告白がただ東方を待っていたのだ! 「その…えっと……実は俺、ト〇ロに会いたいんだ!」 そうもうどんな南でも受け入れる自信が……て、えっ!? 東方が心構えをしている間に南の衝撃的な告白はまだまだ続く。 「あれってやっぱり子供の頃にしか会えないって言うし、もっもしお前とそんなことしたりしたら〇トロに会えないんじゃないかって!凄く心配で!だからせめて俺たちが大人になってからっ」 ―ト……トト〇ッッ!?― 東方は先程まで見入っていた金曜ロー〇ショーをふと思い出した。あのふかふかとした触り心地が良さそうな大きくて大らかな動物のことだ。ト〇ロとは。 「な?分かってくれ、俺の気持ち。まだ一度も見たことないけど…きっといつか!それまではキレイなままでいたいんだ!」 緊張な面持ちで東方に縋るような目で見つめている。ちょっと半泣きなのかもしれない。それからしばらく待っても南は口を開かなかった。どうやら南の告白は終わりを迎えたらしい。 そして南は東方の反応が気になるのか一切東方から目を逸らさず、ピクリとも動かない相手をただ強く見つめる。 「ひ…東方?」 「………南…」 低い音で名を呼ばれ、途端心臓が大きく跳ね上がった南。いつの間にか立場が逆転しているような気がする。 そして東方の表情に変化が現れたのはすぐのこと。 「ん?…東方?」 頬を赤く染めて口元は照れ笑いを抑えたような、なんとも締まりのない顔を見せていた。 南も不思議そうにそれを見つめて、一体奴の中で今の告白がどう受け止められたのかが凄く気になってしまった。 「南もう〜〜、そんな可愛いこと言ってさ…滅法たまらーん!」 とうとう(若いのに)ボケが始まったのか?と南は思うしかない事態が繰り広げられている。やたら目の前では乙女な東方がそこにいた。ひょっとして同じ夢を奴も見てたのだろうか?と少し都合のいいことを南は考えてみた。 しかしその結論は間違いだったと数秒後に気づくこととなるが… 「南!」 ガシィッと両肩を掴む東方。 そして・・・ バサッ。 南は次の瞬間、そのまま後ろに押されてベッドへと逆戻りした。 「ん?」 ―今ひょっとして俺押し倒された?― 「もうホント南、あんまり可愛いこと言うもんだからビックリした。おかげ様で我慢の限界…越えたよ。もう抑えられない」 東方は可愛い表情のまま、そんな末恐ろしい言葉を吐いていた。南は一気に蒼ざめる。 「えっ…だって、俺の話…聞いてた?トッ…〇トロ…」 そして『トト〇』という単語を出した途端東方の息遣いが急に荒くなった。一種の興奮作用を起こしているらしい。完全に「南〇トロ萌え」だった。 「もうダメだ南……俺、俺っっ!」 「わっ!えっっ…ちょっとっ、ダメだって!あっ…あ〜〜〜っっ!」 しばらくお持ち下さい。(表なのでギャグなので略) 「う…うううっ……トト〇、〇トロが…ううっ」 身を滅ぼすような行為の後、南はただベッドの上で泣き崩れていた。結局最後まで抵抗し切れず守っていた貞操があっさりと奪われてしまったのだ。ト〇ロト〇ロと呟きながら…その度に相手を燃え上がらせながら… 「もう〜まだそんな可愛いこと言って…二回目に突入しちゃうぞー?」 東方もようやく得た快感で少々壊れたのか、喋り口調が乱れたままだ。 「うるさい!お前なんて嫌いだ!目先の欲望に走りやがってっ…最低だ!!」 幼い頃からの夢を潰された南はただ悲しみに明け暮れた。 しかし身体はうっかり穢れてしまったけど、心だけはいつまでも純粋でいようと新たに誓う。 ト〇ロと出会う日を夢見て… そしてその頃、凹む南への慰めの言葉を東方は必死で考えていた。裸のままで布団にくるまってる南に身体を寄せて、そっと男らしく耳元で囁く。 「今度休みの日に…二人で山に〇トロ探しに行こうな?」 内容的にはまだまだ子供であるが…南の〇トロの夢が、二人のトト〇の夢へと変わった瞬間だった。 そして南は自分のそばにいてくれる暖かい存在に気付き、東方に一瞬ト〇ロの幻想を見た。 それから二人は別々の寝床へ着いたものの同じト〇ロという名の夢を見るのだった。 何はともあれ幸せそうで良かった。 ハッピーエンド! END. |