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―千石の策略― 山吹中テニス部部長の南はある悩み事で頭を抱えていた。 毎年全国大会に出場するほどの名門のテニス部ではあるのだが、その戦力の要となる人物は非常に生活態度に問題を抱える人物なのだ。まあ生活態度…というよりも、常にマイペースというか…ただ単にやる気がないだけなのか…南としては他の部員の士気にも関わることなので再三の注意を呼びかけてはいるが、なかなか態度を改めてくれることはなかった。 だから自分の練習時間が削られても、奴がサボリに出たと聞かされれば飛んで後を追いかけていくし、練習中遊んでいる姿を見つけると叱咤を飛ばす。 でも相手は自分のスタイルを簡単に崩そうとはしなかった。 ―どうしたら…きちんと練習に励んでくれるんだ…、俺の言うこと全く真剣に聞いてくれやしないし…、俺の部長としての威厳が足りないんだろうけど、もうちょっと協力してくれたって…― 昼休み中、一人部室に篭って解決策を見出そうとする南。しかしそんなに簡単に答えが見つかれば、こんな苦労はしない。 「ひょっとしてこんなに力んでるのって…俺だけなのかな…、千石には千石の考え方があるのかなあ…」 まるで母親のように千石を厳しく取り締まってきた専属風紀委員だったが、そんな自分の態度が千石からしてみれば果てしなく迷惑だったのかもしれない。 「あいつの意見もたまには聞いてやらないとなあ…ミーティングでも開くか…でもあいつがそのミーティングにきちんと顔を出すかどうか…あー心配だ」 ブツブツと独り言を部室内で呟く南。 イキナリ子供の育児に躓いたようなその姿。 ―今日放課後にミーティングを行う!って言ったら部員からもブーイングがきそうだし…明日の昼辺りかなあ、よし今から全員に言って回るか― 配慮に配慮を重ねた南の決断、人が良すぎるのも部長の立場から言って辛いものがある。 胡座をかきながら座り込んでいた南は校舎に向かう為立ち上がろうとすると、自分が出て行く前にガチャッと部室のドアが開く音がした。 ―ん?― 「おっ先客かあ…ここで一眠りしようと思ってたのに〜、南がいちゃーダメだね」 なんと南の悩みの種が目の前に現れた。 「千石…、フッ…ちょうどいい。探す手間が省けたぜ…明日昼休みにここでテニス部3年でミーティングを行うからな、絶対に出席するように!」 悩みなどなさそうな千石の顔を見ているとついムキになるのか、言葉がきつい言い回しになってしまった南。むしろミーティングのメインは千石そのものなのだから、力が入るのも当然かと思うが… 「え?明日の昼休みにミーティング?ええ〜っめんどくさいなあ」 案の定、面白くなさそうな表情を浮かべる千石。 しかし今日の南は態度を強めに強めに心掛けている。こんなことくらいで挫けやしない。 「ほ〜…そうか、もしっお前が欠席したら…その日の放課後どうなるか分かってるんだろうなあ?千石〜〜」 「おおっ恐っ!今日はどうしたの〜南、やけに強気だねえ」 だが向こうも簡単に怯む相手ではなかった。 「たまにはな…ってそんなことよりも!明日の昼休みだぞ!?忘れるなよっ」 南はとりあえず自分が言いたいことだけを告げて、息を切らしながらも満足そうに千石の横を通り過ぎて部室から出ていこうとした。しかし立ち尽くす千石に面した直後、聞き逃せぬ言葉を聞いて南は立ち止まった。 「昼休みねえ…さあ〜て、どうしよっかな?」 「おいっ!お前まさか本気でサボる気っ…」 「それは〜、俺の〜、気分次第」 南は大きくその場で身体の力が抜けた、そしてガクリと跪く。 もう本気で千石を退部処分にしてやりたかった。だが山吹中の戦力の要をやめさせる訳にも行かず…根も悪い人間ではないと南も知っているだけに対処に困る。だから次の出るお願いの言葉は微量の涙も含まれていた。 「なっなあ…頼むから…たまには部長の俺の言うことを聞いてくれよ…千石」 板の間にペタリと座り込んで頭を伏せる南。決して千石に対し頭を下げている訳ではない。でも早速挫けそうになる南であった。常人には千石清純という男の本性を見抜くことはできないのだろうか? 「ん?う〜〜ん、じゃあさ…南も俺の言うことを、たまには聞いてよ。いつも聞く耳持たないような顔をしてるからさ…伝えたいことも伝えられないんだよ南には…」 表情は笑みを絶やしてはいないが、口調はとても真面目で、いつもの千石とは雰囲気がまるで違っていた。南はそんな真剣な相手の姿に驚きを隠しつつ、普段の自分の態度に対して反省の念を浮かべた。 ―そうだよなあ…俺はすぐカーッとなって怒っちゃうから、千石も身を引いちゃうんだよな…相手の言い分もまともに聞かずさ…俺も態度を改めないと…― 更に縮こまる南はトーンダウンした声で千石に話し掛ける。 「そうだな…俺にも改善しなきゃいけない点があったよな…ゴメン、それは謝るよ…俺にできることがあったらなんでもするから…」 そんな南を見下ろす形となっている千石はニッコリと微笑んでいた。 「じゃあさ、早速お願いしたいことがあるんだけど…」 そしてしばらく間があり、突然テニス部部室が悲鳴をあげた。 「うわああああああっっっっ!!!!」 声の主はもちろん…南。 「なっなっなっ何だよ!千石っ、おい…ちょっと!!」 慌てふためくような南の声…一体何が起こってるというのか… 「あれ〜何を戸惑ってるのかな〜?さっき何でも言うこと聞いてくれるって南言ったじゃん」 「そっそんなこと言ってない!…って本気でふざけてるんなら止めろ!」 「ふざけてなんかないよ、大マジ。ほら…南っ」 「うっ!」 「舐めて…」 ここで状況を説明しよう! 南は千石の前に跪かされて、眼前にとんでもないモノを晒されている。 千石はロッカーにもたれたまま、上から南を見下ろしていた。 つまり南は千石に「口で奉仕」を要求されている。 もちろん南はそんなことに簡単に従う訳がない。 只今絶賛抗争中。 「いっ嫌だ!なんでそんなこと俺が…っ、ていうかふざけるなよ!なに考えてるんだ千石!」 「ふ〜ん…嫌なんだ?じゃあ今日はこれから学校サボって街へ出て、適当に女の子ナンパして、やってもらおうかなあ〜」 「ハッハア!?なっ何バカなこと考えてんだよ!そんな犯罪みたいな事しやがったら承知しないからな!」 「じゃあ…南がしてよ、俺がー性犯罪に走らないように、面倒見てよ」 「うっ!」 そして言い負かされる南。 怒気が去り、青ざめた顔で自分が置かれてるこの状況を見る。 目の前に差し出された男の性器に震え上がる。 「でっでも何で俺がっ……こんなっ…できるわけ…」 「やってもいないのにできないって決め付けるんだ南は…案外小心者だなー」 相手の反論を全て跳ね返し、自分が求める方向へと相手を無理矢理導いていく。後ほんの少しで相手は堕ちる…と千石は自らの勝利を確信した。 「ほら…明日昼のミーティングに出てほしいんだろ?俺のこと、南の口で気持ち良くして欲しいなあ…」 『ミーティング』の言葉を出されて一気に気持ちが揺るいだ南、これからの山吹テニス部を護る為には現部長である自分が身を呈して不安要素を取り除いていくしかない。そんな結論に辿り着いてしまった。 「わ…分かった…」 多少の屈辱的なことも我慢して受け入れていかなくてはならない、と南は決意した。 恐る恐る千石に近づくと「はい」と渡されて、南は素直にそれを受け取り手で支えた。不安げな瞳で一度見上げるけれど、千石と目が合うと慌てて視線を下に向けた。その瞬間、自分はひょっとしてとんでもない承諾をしてしまったのでないか?と我に返るが、今更引くに引けず、そっと舌を突き出した。 目を瞑りながら震えた舌で千石の先端をチロリと舐めてみた。 ―うっっ!― 一瞬吐き気に襲われたが、ここで怯む訳にもいかず気持ちが悪いのを我慢して、再び相手の先端へ舌を這わせた。 無心で舌を動かし続けていると、自分の唾液で湿り出す先端。透明の糸が千石と南の間を繋ぐ。でも南は…当たり前だが初めての行為なので、これから先をどうすればいいのか路頭に迷いそうな勢いであった。 少し戸惑った様子を南が見せると、千石はすかさず痛い言葉を投げかけてくる。 「あれ?もう無理なのかな?南は度胸がないなあ…」 「うっ……!そっそんなことっ」 わざと相手を挑発させるような千石の言葉に、南は軽く騙されて挑発に乗ってしまう。まさに千石の狙いはそこなのだけど…今の南にはそこまで頭が回らない、残念ながら。 そして南の心に火が点いたのか…行為が再開された時は多少大胆に舌を辺りに巡らせた。まだ柔らかいモノを手に持ちながら、側面から棒を唇で挟み込んだ。そして滑らせるように相手に刺激を与えていく。 しばし羞恥な心を忘れて没頭した。 「んっ…っ、ふうっ…」 妖しく南の息が零れ落ちる中、乾く唇を一舐めし楽しげに笑みを浮かべて下を眺める千石。まるで支配者のような気分だろう。 「南って……」 「っ…?」 「下手だね」 「…っ!」 突き放すような千石の冷たい声に、南は一瞬崩れ落ちそうになったが、それは何とか堪えてみせた。むしろ初めてで上手い人など存在する訳もなく…酷な事を千石はわざと言うのだ。 「うっ…、そんなのっ…ケホッ、当たり前っ」 「ふーん…まあでもこのままじゃイけそうにないから、ミーティングには出られないねえ、南が適当にしかしてくれなかったからさ」 「な…何っ!」 冷たく見下ろされる千石の視線から逃げるように顔を俯かせる南、屈辱の上に更なる屈辱を上乗せしてくる千石に腹立たしい気持ちが心の中で煮え繰り返っているが、何故か途中で放り出せない自分も存在する。 ―…くそっ!― でも今は目の前の男をどうにかして口でイかせないと話が先に進まない…南はとにかく自分が頑張るしかない!と喝を入れなおして再び奉仕活動を始めた。 「んっ…」 しつこく舌で愛撫した結果、何とか目に見えるような変化を遂げさせはした。だから意を決して今度は咥え込もうと大きく口を開けた。ゆっくりと含ませ歯をぶつけないように気をつけて、距離を必死で縮めようと努力する。 「うっっ、んん…っ」 苦しそうに喉から声を漏らしながら、どうにか先端だけでも咥え込むことは成功した。とにかく無我夢中で舌を動かし唇を窄めて刺激を与えていく。 「ううっ…っ」 でもあまりの息苦しさに、そこから一度撤退を試みる南…しかしふと先ほどの千石の言葉を思い出して、完全に引き抜いてしまう前に思い留まり勢いをつけて更に深く咥え込んだ。 ―おっ…、南やるねー…へえ、頑張りやさんだな…じゃあっ― 千石は笑みを浮かべたまま、右手を南の頭に添えて、ジッと下を眺めた。多分視線に気付いた南は敢えて目を合わさないけれど、乗せられた右手が気になって大きな不安がよぎる。 「ん…っ」 「南ー、ほらっ…もっと奥まで入るんじゃない?」 そして南の嫌な予感は的中して、千石の右手が強引に奥まで突き立てるように南の頭を引き寄せた。 「んんっっ!んっ…ふっっ」 そんな鬼の仕打ちに、南の意思とは関係なく両目から涙を零させていた。そして口中に広がってくる苦い味と溜まりに溜まった唾液がだらしなく南の口元を汚す。 南は大きく目を見開かせて主人に助けを乞う、もう許してくれ…と。しかし千石がそんな中途半端に終わらせてくれる筈もなく、拷問のような愛撫は続く。 「ほらほら、もっと口動かしてー、緩急つけてー、しっかりイかせてくれよ?」 「んぐっ!ん…っ、んんっ」 ポタポタと南の顎元から雫が何度も床に弾け落ちる。 ―後…もう少しの辛抱…千石の奴さえっ、イかせちまえばっ…― ジュルッと卑猥な音を立てながら、必死に吸い付いて精を吐き出させようと踏ん張る南、羞恥もどこかに置き忘れてきた。喉に流れてくる液体も気にせず相手を追い詰める。 ―早くっっ、イけっ!この〜!― しかしまだ笑んでいられるほどの余裕を千石は持ち合わせている。中々しぶとい男だ。 「はは…いいよー、南…気持ちいいよっ」 どこまでもふざけた声にカチンと頭にきながら、南は何度も何度も相手に解放を促した。次第に顎の方に限界が訪れて、もうダメだ!と判断した時、南は一気に棒を引きずり離した。 「ううっ…っ」 「あれ?南はもう限界かな……でもちょうどよかった、俺も限界」 諦めず舌で先端部分に刺激を与え続けていた南に、千石からの天の声。 しかしホッとするよりも先に、生暖かい液が顔面に飛び散った事実に南は呆然とする以外なかった。 「はい、ご苦労様」 ベッタリと不快な感触に匂い…千石の明るい声…どうやら終わったらしい、それだけは南にも理解できた。しかしこの状況は一体… ―え……俺、千石に…― 「メンゴ、メンゴ…顔にいっぱいかけちゃった」 ―は?…じゃあ俺は千石に顔射…され― 「って…おい!千…ごっっ!?うっ、うえ〜〜〜〜っっっ!!!」 頭で状況が全て理解できた途端、その気分の悪さに咄嗟に何かを吐き出した。 そんな南の姿を見ながら千石は不機嫌そうに呟く。 「あ〜〜っ!酷いなあ…南。さっきまであんなにラブラブだったのに〜」 「だっ誰がっ…うっ!うえ〜〜〜」 一向に気分の良くならない南。 「まあちゃ〜んとイかせてくれたからさ、出るよ」 「そっそうだ!ちゃっ…ちゃんと出ろよ!うえっ!」 「任せて任せて〜、じゃあ南、続きはまた今度ねー」 「はっ…はあ!?」 不吉な言葉を残して千石は部室を去っていった。 最悪な状態でポツリと残された南だが、すぐに午後の授業が始まってしまうので急いで顔を丹念に洗い、口をススイで猛ダッシュで教室へ帰っていった。 その日の部活、千石きちんと真面目に顔を出していた。 練習にも手を抜かず、まさに南の求めていた千石の在るべき姿だった。 かなりのリスクを負ったが、これで良かったんだ…と妙に納得する南であった。 そして…次の日。 肝心の昼休みのミーティング。 千石は現れなかった。 南の怒りが最大限に達したことは言うまでもない。 ≪オマケ≫ 「あれ〜どこいったんだ…、あっ室町!千石見なかったか?」 「いいえ、千石さんがどうかしたんですか?」 「あいつ…昨日あれほど昼休みにミーティングするからって言っておいたのに!(かっ身体まで張ったのに!)」 「あーあ、逃げられましたか」 「しょうがない。もうこうなったら放課後……公開処刑しかない!」 「まあまあ南部長、俺とワンゲームでもやって気でも紛らわせましょうよ」 「くそーーっっっ!!!千石め〜!」 そして放課後。 「おい、千石……今日の昼休みにミーティングするってあれほど言ってたよなっ!?むしろその約束だったよなっ!?」 練習前、千石を見事捕まえた南。そして早速尋問の時間である。 「え?昼のミーティング?そんな話だったっけ?あ〜俺、昨日の放課後の練習と勘違いしてたかも。あ〜メンゴメンゴ」 「言いたいことはそれだけか……ちょっと面貸せ、千石…」 明らかにやば〜い空気を匂わせてる南。 そしてそれを瞬時に察知した千石。 「いやあ〜遠慮しとくよ、俺は今から他校の偵察に行かないと…」 「行かせるかっ、千石〜〜〜〜〜っっっっっ!!!!!」 そして南の報復は始まった。 しかしまたきっと騙される運命にあるのだろう…純粋で負けず嫌いで真面目っ子な我等の南部長なのだから! さあ…もういちど思い出そう あの勇気を! 場面変わって… ふと室町は山吹テニス部の人数が少ないことに気がついた。 「あれ?山吹って…千石さんと南部長と俺しかいなかったっけ?何人か忘れてるような気がするんだけど〜…あれ?」 だがいくら考えても室町が答えに到達する事はなかったのだ。 A.それはここが『Kiss of Prince−Flame−』の世界だから。 END. |