―触れ合う二人2―


だがここで南はふと東方のことを考えた。自分はこうやってへとへとになるくらい愛撫を施してもらったが、東方は終始与えっぱなしだった。それは勿論最初の南との約束があって現実こうなっている訳だが、やはり申し訳ない気がしてくる。自分ばかりが気持ち良くしてもらっていい訳がない。

「なあ…お前…っ」

なんと声を掛けていいかは分からないが、このまま放置する訳にはいかないと疲れた身体で顔を上げて声を掛ける。しかし東方はちょっと困ったように笑みを浮かべながら南の頭を数回優しく撫でただけだった。きっと南が何を言いたいか分かってしまったから自らはぐらかそうとしたのだ。

「でもっ!」

けれどそれでは南が納得できない、確かにああ言った手前今更複雑ではあるのだが、このままにはしておけない。せめて自分と同じように抜いてあげることも可能なんだから。しかしそれでも南は釈然としない。そんなぐるぐる考え込んでいる南に気にするなと声を掛けてくる東方が恨めしい。

「南、きちんと約束は守るから、痛いことはしない」

「………」

納得できない。自分が言い出したことなのに相手がそれを主張すればするほど納得ができない。こんな矛盾ありなのか。向かい合う姿勢を取る二人だが、南はふと衣服の上からの相手の下腹部に視線をやると、どう見ても張り詰めた雄がそこにある。でも何故か南は今からおもむろに手を伸ばしてそれを扱いてやる…という考えには至らなかった。それはきっと東方が何を一番欲しているか知っているからだ、望んでいるものは唯一つ。南にしか与えられない。

「……指」

「ん?」

「指くらいなら……入れてもいいぞ…」

「んん?…南っ!?」

突然ぼそりと呟き始めた南の言葉は東方にとって意外なんてものじゃない言葉だった。自分の目の前で、少し羞恥は感じているようだが強がりで吐き出されているとは思えない言葉だった。指なら入れてもいいと言う…当然入れる場所はあそこしかない。確かに指だけなら痛くないかもしれない、でも本数が増えれば…いや慣らした後に普段なら挿入されているものを考えればとても痛いはずだ。
南は本気だ、本気で指だけならいい…と思っている訳ではない。そう口では言いながらも結局そんなことをすればその先どうなるか分かった上で発言してるのだ。

容認しない振りをしつつ本心で肯定している。

それに気付かない東方じゃない。

「南……本当に?」

「指くらいなら…痛くないしな…」

あくまでも流されることを前提に話は進められる。南は指なんて入れられたら絶対そのまま流されることは自分でも分かっているし、東方も指だけと言われて実際に指だけを入れたら絶対その先の自分の行動を止められる自信はない。どう考えても互いの理性はもたず、間違いなく二人は100%行為に及ぶ。

東方の前で膝立ちしている南がそこにいる。下の制服は先の行為で膝の辺りまで下がっていて、上の制服は前が完全に開いたままだ。シャツがある分素肌は隠されてしまっているが、それでも充分官能的に見えた。 南の見せてくれた思いやりを決して無駄にはせず、東方はそっと手を南の後ろに回す。それからその場所を探り当てて、南の吐き出したもので濡れていた指を中へとゆっくり突き進ませていった。

「んっ…」

途端、南の声が上がるが、東方は慎重に痛みを与えないよう奥へと潜り込ませる。南の身体に力が入ってしまっていることは様子で大体分かるが、指1本くらいなら平気だろう。これからゆっくり慣らしていけばいい、本当は東方自身切羽詰っている状態と言えてしまうのだが、そんなこと頭の片隅に追いやっている。
何よりも南、そんな優先順位が東方の中で絶対なのだ。

南の手が肩に置かれて、中で指を動かす度に南の手に力が篭る。東方もそれが肩から直に伝わり、南が平気か苦しいか判断する。

「南なるべく身体から力抜いてな」

そう優しく声を掛け、南も目を瞑りながらも素直に頷いている。きっと慣れない行為についていこうと南なりに必死なのだ。指が何度も抜き差しされる中で、身体全体が震えている。

「辛かったらまた…さっきみたいに俺にしがみついてきていいから」

寝かせてあげた方がいいかと思ったが、何となく南がそれを望んでないように思えて、身体を起こしたままで行為は続けられる。少し見上げれば息が荒い南の余裕のない表情が見えて、愛しく思えてしょうがない。少し感じているのか羞恥からなのか頬も赤くて吐息が色っぽい。きっと密かに東方が中の感じる部分を擦っているからなのかもしれない。

「ここ、気持ちいい?」

こんなことを聞くと、いちいち聞くな!といつもならすぐに怒られてしまう。でも今日は何も言わない、だから当然返事もない。けれど見ていればすぐに分かることだ、南の身体に何らかの異変が起きていることくらい。だから少し意地悪かと思ったが、目の前の南の肌を覆っているシャツを空いてる手で唐突に捲り上げる。

「わっ…、な…なにっ!」

すると焦るような南の声が聞こえて、東方はニッと笑みを浮かべた。今度は余り優しくない笑みだ。また熱を持ち始めていた南の身体に思わず欲情して、指は中に含ませたまま目の前に現れた胸の突起に吸い付き貪りつく。南の一度果てたものが今の食いつきで更に硬度を増し、羞恥を感じながらも、この猛攻に耐えていた。互いに異常な興奮状態で時間を過ごし、体内をうごめく指先も南の身体が慣れてきたのか少し激しく抜き差しを繰り返される。それに堪らず南も声を上げてしまう。

「あっ、ああ…!、んっ…」

しつこく胸も中も同時に弄られて、思わず理性が飛びそうになる。自然と腰が揺れて物足りないとさえ思えてくる。するとそんな南の思考も読み取ったのか、東方は指を一度引き抜き、今度はもう1本添えて再び秘所に宛がう。そしてだいぶ柔らかく解された奥に多少無理はしたが難なく指を飲み込ませた。南も痛がる素振りは見せない。

「…平気か?」

胸に顔を埋めながら優しく気遣い指を沈ませる。奥まで辿り着いては入り口近くまで引き抜いて、徐々にその速度も速める。南にとっては耳を塞ぎたくなるような音が局部から漏れて、身体を何度も指で突かれ、しかし途中で止めてしまいたいとは思えず、文字通り行為に流されている。元々そのつもりであったが、やはり何だかんだ言っても相手のことが好きで、繋がりたい欲求が身体の内から湧き出てくるのだろう。

―あっ、くそ…っ、身体が熱い…!―

そんな自分が悔しいと思わなくもない。南だって東方と同じ男だし役割的にはこういう位置だが、抱かれることに対する抵抗を失いがちで今となっては意識も薄れつつある、それが時に男としてのプライドを刺激する。相手が東方だから許せることであり、こんな風に欲して感じてしまうのも惚れた弱みなのだが、自我を失うほど乱れて求めてしまいたくはない、そういう快楽に弱い人間だと思われたくはない。
結局そうなってしまっているのかもしれないが、意気込みだけはいつだってそのつもりなのだ。

―けどもうっ、なんかっ…ダメだっ―

しがみつきたい衝動に駆られるが、胸に執着されているのでグッと相手の肩を掴んで我慢する。先ほど一度達したばかりなのに、もう次を追い求めている。直接触れられなくても正直に反応を示してしまう。指がグチャグチャと行き来している、内壁を擦られ広げるように動かされて肉欲が謙虚に表れてくる。

「んっ!あっ…」

「南、指…」

「痛くない!!」

その瞬間東方は少しキョトンと大きく目を開かせ、行為の最中だったが純粋に驚いてしまう。東方的にはもう1本増やしても大丈夫?と声を掛けるつもりだったのだが、多分南は「中の指、痛くないか?」と気遣ってきたのかと思いそう返事をしたのだ。しかも慌てて大きな声で。
それは「痛いのが嫌だ」という最初の取り決めを南自身も特に気にしてて、痛いといえばこの行為が止められると分かっていてそう叫んでいるのだ。ずっと我慢してる東方を思ってのことだし、南自身にとっても今ここで止められるのは不本意だと思っている。

―ああどうしよう…すごく…、入れたい…―

ようやく胸から顔を離して、目の前の必死で何かに耐える南の色気の増した表情をジッと見つめる。何だか無性に唇に触れたくなって、南に気付かれないようにさっとキスをした。すると驚きで身体が跳ねた南は目を開ける、当然そこには東方の真摯な瞳がある訳で、そんな不意打ちに心をときめかせた。けれど意外にもキスは触れただけで離されて、南は一瞬なんのことか分からなかった。このタイミングのキスの意味合いをすぐに理解は出来なかった。でも少し考えて、分かった気がする。

無言で訴えるような東方の視線に意味を悟って、南はおもむろに相手の身体にしがみつく。そして小さな声で呟いた。

「…早く、しろよ」

もちろんヤケクソで放った言葉ではない。南なりの…精一杯の誘いだ。こういう時の自分はとても不器用で、ついつい心にもないことを強がって言い放ってしまう癖があるが今日はそんな自分をグッと押し込める。

「うん」

素直な東方の返答に南もホッとしながら、しばらくして相手のベルトを外す音が聞こえてくると一気に緊張は訪れる。その時をただ待つ身として不安は当然ある。これから実際に自分が拒否をした痛いとされることをするのだ。でももうそれすらも構わないと思っている自分。ゆっくりと抱き締めていた身体を離して、相手と向き合う。チラッと視線を下に向けてみれば表に取り出されたナニが上を向いてそこにあって、南は一瞬怯む。

「なるべく痛くないようにするから…大丈夫」

そしてそっと位置を合わせようと東方は動き、東方を跨いでいる状態の南はなるべく身体の力を抜こうと努力する。けれど押し当てられれば条件反射的に身体を硬直させてしまう。色んな感情から身体が震える、痛みに怯えているのもあれば、いよいよ繋がるのかと妙な期待感からもある。とにかくただではすまない。
東方も緊張しているのか、一度大きく息を吸いそして吐き出す。南の負担を軽くしてやりたいが、実際そこまで気遣える余裕を理性を保ってどの程度できるのか、そこが不安でもあった。でももう待てず、入り口を指で開きながら自身を埋め込み始める。

「っ!」

「力抜いて…っ」

体勢が南上位なので、南が腰を引けばそれからはいとも簡単に逃げられることが出来る。だから申し訳ないが南の腰の位置を固定して東方は先端を潜り込ませていく。中は想像以上に狭くてきつい。南もその衝撃に必死に耐えている様子だ。きっと痛い思いをしている。
でも内壁を抉るようにそれは進んでいく、徐々にゆっくりとだが確実に南の中で存在感を示していった。

「はあ、はあ…南…っ」

「ん!んんっっ!」

奥へと突き進もうとする東方を無意識の内に締め付け、南は声を殺しながらその圧迫感に壊れそうになる。けれど東方も諦めず更なる挿入を試みて、残酷だが固定された南の腰を自分に引き寄せるようにして、グイッと半ば強引に自身を突き立てる。

「あっ!!」

すると二人の距離はあっと言う間に縮まり、この時ようやく全てを収めきった。自分に座り込ませるように南を腰に押し付けて挿入させた。南は悲鳴のような高い声を上げて、きつく目を伏せる。同時に力も入り東方を唸らせる。

「うっ…南、ゆっくり動くから…っ」

そろそろと腰を揺らし始め、南に刺激を与える。深く収まった自分自身が南の奥を揺さぶる。本当は強く叩きつけたい欲求が生まれたけれど我慢だ、南が慣れてくるまで無理は禁物だ。

「うっうっ!…あっ」

何とか気を紛らせてやろうと顔中にキスをしたり耳を口に含んでみたり、東方も試行錯誤する。両手をゆっくりと服の中に忍ばせてシャツを捲り上げながら両方の胸の突起をこりこりと指で摘んでやる。

「あっっ!ふっ…ああ…!」

すると南の反応は良く、しばらく腰を軽く揺らして両乳首をいじりながら首筋に顔を埋める。そうして南から力が抜けていくのが分かると手で尻の肉を掴み、入り口を押し広げるようにしながら本格的に律動を開始させる。南の身体を弾ませるように何度も突き上げる動きを見せて、性器を中で擦り付ける。南はたまらず東方に抱きついて、自分の中で起きている非常事態を何とか無事にやり過ごそうと強くなる一方の衝撃に耐え続ける。

「いっ!んんっっ、あっ…う…っ」

「南っ…大丈夫…?南…っ」

「だっ、だいじょうっ…ぶ!、い…痛く…ないっ…痛く、ない…!」

それは多少の強がりではあったが、南は必死で東方を安心させようと何度も同じ言葉を繰り返す。もう身体は完全に南の言うことを聞かない、一心不乱に貫かれて擦れあう部分が熱くて仕方がない。相手の息遣いが耳に届いて、向こうも必死なんだと南は知る。少しでも良くしてやりたいと腰を浮かせて、相手が動きやすいように南も努力した。すると更に激しい抽送が南を待ち構えていて、全身が痺れるような感覚に陥り悦楽で頭がまともに働かなかった。

「あっああっ!…んっ!」

相手に知られている気持ちの良い箇所を何度も攻め立てられて、南は勝手に腰が揺れた。無我夢中で欲しがる自分がそこにいて、東方もタイミングを合わせて抜き差しを繰り返す。二人の息が合えば怖いものは何もなく、二人でないと得られない快楽を共有する。人間らしい欲望を包み隠さず求めて、互いをより近い場所で感じ合う。

「すごくっ…気持ちいい、南…っ」

そして東方は「痛くない?」と密着している南にしか届かないほどの声で囁くと、南はおぼろげだったが二度確かに頷いた。それは強がりでもなんでもなく、南の本心だった。

「ああっもうっっ、東…方…っ」

もう耐えられないと名を呼び、南は限界であることを相手に告げる。それは東方も同じで限界が近いと態度で示す。急ぐように腰を突き動かして、南の膨れ上がった性器を掴み、既に濡れぼそっているそれを性急に扱いてやる。するとより一層南の締まりは良くなって東方はその感覚に酔いしれた。

「南…っ、俺ももう…やばいっ」

「はぁっ、あっ!はっ…」

最後の激しい追い上げに、繋がりあった身体が溶けていく感覚の中で何もかも混ざり合い二人でどこまでも昇り詰めていく。濃密な時間を共に過ごし、快楽は最高潮に達した。

「あっあっ…、ああっっ!!」

「ンッッ!」

そして全てを解き放った二人は、しばらくそのままの状態で興奮が冷め止むまでお互い離れず余韻に浸った。うっかり脳まで快感に侵され、ドロドロ状態でお互いのこと以外を何も考えることは出来なかった。しかしとても満たされた表情で、そこには後悔の欠片など一欠けらも見当たらなかった…








また静寂の時間が訪れる。

お互い開放的になりすぎて少し後処理に時間を要したが、汚れを拭き取り衣服を整えて始まる前の状態に無理やり戻し、また部屋の中で沈黙の時を過ごしていた。どうも事後というのは特に会話に困るらしく、こういうことは二人にとっては珍しくない。だが毎回気まずいのは確かだ。

「………」

だが始まる前と一つだけ相違点を挙げれば、それは二人の身体が常に寄り添い合っていること。

肩に手を回すなどということもなく、互いに身体を預けて身体の一部と一部を触れ合わせて、どことなく安心感を得ているようにも見える。

激しい行為の後に静かで流れるような時間を過ごし、二人はそれでバランスを取り合っているのかもしれない。激しさの後には穏やかさを、何とも二人らしいと思える。

しかしいつまでも沈黙のままでいる訳にもいかず、今日は東方からそれを打ち破る。

「なあ南、俺は今日…ちゃんと南との約束守れていたか?」

それは少し気になっていたことだった。もちろん約束とは、痛いのが嫌だ、と言う南の言葉に対し「痛いことはしない」と東方が誓ったあの言葉のことだ。一応は善処したつもりだが、後半はもう記憶が飛ぶくらい訳が分からなくなってしまって、果たして紳士的な態度で最後まで臨めたのか些か不安だったのだ。
だからこの機会にきちんと聞いておく。きっと今の南なら答えてくれるはずだ。

南はそんな唐突な質問に少し考えて、はぁ…と溜め息を一つ吐いた。

そしてしばらく考えた後、こう答えてやる。


「………まあ、ギリギリセーフってとこかな」


少し照れた様子で、でも堂々と南ははっきり相手に告げてやった。

そんな紡がれた答えは心配していた東方を舞い上がらせるには十分なもので、思わずその嬉しさから東方は隣にいる南をがばっと大きく縋りつくように抱き締めた。

「うわっっ!何だよ急にっ、抱きつくな!」

「嬉しいよ、すごく嬉しい南!良かった…本当に良かった…!」

「もうー何だよ!大袈裟な奴だなあ〜」

「だって本当に嬉しいんだから」

さっきまで大人のように濃密に触れ合っていたとは思えないほど純粋で子供のやり取りを見せる二人。

でもとても幸せそうで笑顔は絶えない。


「ったく、しょうがない奴だなあ…」


南は困った風にだが優しく微笑んで二人はそっと向かい合い、互いの唇で触れ合った。


END.



すごく久しぶりに書いた東南小説でした。楽しすぎる…
どうも萌えが燃え上がってしまい、久々でエロです。でもラブラブです。
今回は「優しい東方」「(ある程度)素直に受け入れる南」で、
ラブラブ東南エロ(南喘ぎすぎ)がテーマ(?)でした。
本人はうまく書けたと思っています(笑)おー嬉しいー!(すげー自己満・笑)
ここまで読んでくださった方ありがとうございました!
★水瀬央★

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