―夢魔の潜む部屋3―


「南のイキ顔もここで見たいなあ」
そんな醜い欲望丸出しの千石だったが、そんな願いももうすぐ叶ってしまいそうな状況だった。見るからに長くはもちそうにない南、夢の中でも多少の恥ずかしさは感じるのか千石に顔を背けるようにしている。
「もう南…イクかな?」
するとそんな切羽詰ったこの状況に相応しくない間の抜けた声が東方から漏れて、千石は南から目を離す。そして東方の質問に答えてやった。
「もうそろそろでしょ、ほら、見てごらんよ…イキたそうにしてるじゃん、早く楽にしてあげたら?」
「…そっか」
東方は今までどおり腰も使いつつ、その手で南のものを掴ませると、同時に一気に南を攻め始めた。またタイミングが合うのか南も叫ぶような声を上げ千石の目も忘れて行為に没頭している。
「ああっ…あ!そんなっっ、はっ…あっ」
熱い何かが流れ込んでくるような感覚に襲われる南は懸命に身体を捩りながら、妙な呪縛から逃れようともがくが腰は素直に振ってしまう。

「南ー、オレの手でしてよ」
すると二人の世界に入られる前にすかさず千石は口を挟むと、すっかり反応した自身を取り出して南の手に無理矢理握りこませる。もう南も意味が分からず、ただ促されるままに手を上下に擦り始めた。

三人とも無我夢中で目先の快楽に飛びつき合宿最終日の夜は更けていく。

「あ、やばい…俺、もうっ…出るっ」

「南ーあんまりオレの大事なとこ乱暴に扱わないでよ、イっちゃうじゃない」

「あっあっ、もうっ身体がっっ、おかし…っ」

それぞれに限界が訪れて、次の瞬間彼らは皆華々しく…散った。

東方は中に注ぎ込み、南は東方の手と自らの腹を汚し、そして千石はお待ちかねのイキ顔を堪能しながら達した。
南と東方が荒く呼吸をする中で千石だけは涼しい顔をしている。とりあえず自分の後始末をして身を休めていた。東方も繋がりを解いた後、上半身がだらん…と垂れ下がり座ったままピクリともしない。また南も衣服の乱れや汁まみれの身体のことなど忘れてしまったかのように横たわって動かない。二人とも呼吸は荒いままなので、今必死に早く落ち着かせようと頑張っているのだろう。
千石はそんな状態の二人を面白げに眺めながら、何かをやり遂げたような清々しい顔つきとなる。

―あー楽しかった、まさか最後はこんな乱交プレイになるとは思ってもいなかったけど、超気持ち良かった…そして下半身もスッキリ!―

むしろこんな淫らな展開になったのならエロ本は没収されてラッキーだったと千石は思い直す。正直ここまでやれるとは思っていなかったが、自分のエロさにも純粋に驚かされた。
「ヤっちゃったね〜みんなで……ん?」
そして千石はあることに気付く。先程から呼吸を乱して体力の回復を図っていたであろう二人の動きがいつの間にかピタッと止まっていた。
「ん?んん〜?」
千石は目を細めながら恐る恐る二人の元へ寄っていく。
「あっ!」
そして目を見開いた。

「ふっ…二人とも、寝てる……!」

よく聞けば荒い呼吸が穏やかな寝息へといつの間にか変貌していた。しかも行為後そのまんまで。
「あっちゃー…早速あっちの世界に帰っちゃったよ二人とも…まあ今のうちにオレが証拠隠滅を図っておこうか…」
千石はまず状態の酷い南から面倒を見始めて、キレイに身体を拭いてあげる。もちろん中も出来る限りは拭いてやった。途中で起きられないように努めながら。脱ぎっぱなしの服も当然着せてあげて、捲くし立てられたTシャツを元に戻し、自分が脱がした下着とハーフパンツも何事もなかったように戻しておいた。最後掛け布団も身体に乗せてあげて。

それから今度は座った状態から横にコテンと倒れこんだ東方の始末をする。正直身体を拭いてあげる気は起きなかったので(冷たいようだが)服装だけを整えてやった。
「ていうか…なんでオレが東方のパンツを元に戻してやらないといけないんだ…せめて直してから寝てくれよー」
丸出しのまま放っておく訳にも当然いかず、渋々元に戻してやって、ここからが一番大変な作業だった。この身長187cm・体重76kの男を元々の寝床まで連れていかなくてはならない。
「うげー…無理矢理引き摺っていくしか…、う!さすがに重いぞ〜っ」
だがこの夜を誤魔化しきるには必要な労働であった。真っ赤な顔をしながら何とか所定の位置まで運び適当に布団を被せて、最後は自分も寝床に着く。

「よーし…完璧…ふああ〜あ、オレも眠くなってきたー、おやすみー」
一体誰に告げているのか。

完璧に処理し終えた後、千石は二人を急いで追いかけるように高速で眠りについたのだった。


そして朝が訪れ…


チュンチュンと喉かな鳥の鳴き声が聞こえてくる中で彼らは目を覚ます。
南はゆっくりと瞼を開けて、いつものように小部屋の天井が見えてきた。だがまだ身体を起こす気配はない。昨日までなら目が覚めたと同時に身体からも一気に眠気が飛んでいくのだが、何故か今日はまだ疲れが取れていない気がして南はしばらく布団の中で過ごす。すると隣からガサゴソと人が起きる音を聞いた、自然とそちらの方に視線を向ける。
少しまだ寝ぼけたような顔をしているが東方が誰よりも早く身を起こした。
南はまだ覚醒しきれない頭で、なんとなく先に起きた東方の方を向いていた。そしたら偶然に東方もこちらを見てきて、二人は視線が鉢合わせとなる。
その時東方はとても驚いたような顔をして慌てて視線を逸らしてきた。そんな奴の態度に南も疑問を覚えながら、徐々に頭が冴えていく…眠気が飛んでいく。

―ん?―

そしてはっきりと目が開かれた時、南も東方と同じような行動をそっくりそのまま取った。慌てて反対側を向いて顔が紅潮しているのが分かるから、それが冷めるまでジッとしている。

この二人の意味深な行動はもしかしてもしかして昨夜の出来事を鮮明に覚えていたのか?と思わざるを得ない状況だ。
だがしかし、そうではないのだ。

―うわーっ、俺昨日なんて夢見ちまったんだっっ!!!―

そう、やはり夢の中の出来事だと二人は思い込んでいる。
つまりお互いやましい夢を見てしまったから、どうも顔が合わせ辛くて困っているのだ。内容が内容なだけにある意味深刻に捉えてしまう。

「あ、ああ、お…おはよう南、きょ今日でいよいよここの寺ともお別れだなっ」

「え、ああ、おはようっ、おっ終わりだな〜今日で」

東方に話し掛けられて、南もとりあえず身を起こそうと布団を捲り、上半身に力を入れたその時…
「ウウッ!!」
なんだか妙な痛みに突き当たってしまい南は硬直した。

「どっどうしたんだ、南?」
「あっいや…なんか、腰がいてえ…、いっ!」
「腰?なんだ、昨日の練習でまさか痛めたのか?だっ大丈夫か?」
「あー大丈夫大丈夫、なんか急にきたからビックリしただけで多分すぐ良くなる、つつっ…」
もちろんその腰の痛みの原因は昨夜の秘密の行動な訳で…でも二人は気付いていない。南も不思議そうに腰付近を摩っている。
「大会前に怪我だけはよしてくれよー、今日は軽めの練習だけど少し休んでろよ」
「平気だって、多分」

そんなやり取りが行われている中、実はコッソリ千石は布団の中で目を覚ましていた。そして会話も盗み聞きしていた。
―よーし!二人ともマジで気付いてない!!そりゃあ昨日あれだけヤられれば腰も痛いって南…でも東方がトドメさしたんだからな!オレじゃないぞ〜―
どこまでも天然な二人にホッと安心しつつ、千石はまだ起きようとはしない。

「まだ皆起こさなくていいのか?」
「ああ、まだいいだろ。もう少し千石も室町も寝かせておいてやろうぜ」
とりあえず目は合わせられないけど落ち着いてきた二人はいつも通りの会話を交わす。夢のことは頭から強制排除させているらしい。
「でもなんか身体に違和感があるんだよな…スッキリしているようなしていないような…なんだろう」
「俺はなんだかスッキリしてるな、別に変わったことしてないのに…なんでだろう」

「なんだよ、お前もっ………、ヴッッ!!」

会話の途中に突然不意に南が唸りだした。
東方も急な変わりように驚いて南を見る。
「どっどうしたんだ?やっぱり痛むのか?」
「うっ…うっ…、〜〜〜っっ!!!」

言葉にならない声を上げて南は、痛む腰のことなどお構いなしに飛び起きて、猛ダッシュで部屋を抜けて廊下を走り去っていった。あまりにも唐突な出来事に東方は目を丸くしながら南が消えていった方向を眺めて呆然としている。一体南の身に何が起こったのか…今の時点で知る由もないが、当の本人がいなくなったことで東方はまた今日の夢のことを少し振り返る。
「…なんであんな夢見たんだろう…、俺別に南のことそんな目では…」
ぶつぶつと呟き自己嫌悪に陥っている。まさか無二の親友をそんな…
はあ…と盛大に溜め息をつき東方は一人で反省した。

すると先程物凄い形相で駆けていった南が今度は落ち着いて帰ってきた。東方は反省会をやめて、やたらゲッソリしている南に声を掛ける。
「どっどうしたんだ…?本当に…」
しかし南はすぐには返答せず、自分の寝床にどっしりと腰を下ろして、こちらもまた盛大に溜め息をついた。
「はあ〜〜…」
「…?、み…南…?」

「………おもいっきり腹下った」

「ええっ!?」
そんな南の告白に東方も微妙にリアクションに困りながら驚く。

「腹下したって…なんか昨日変な物でも食ったのか?」
「しっ知らねえよ!別に変なもんなんて食った覚えもねえし…あー気分悪」
「やっぱりちょっと体調悪いんじゃないのか?今日は休んどけよ…」
「………うん…」

こんな二人のやり取りも千石は黙って布団の中で聞いていた。もう今は必死で笑いを堪えている。
―そりゃー腹も下すよ南…、中の液までは全部出せてやれなかったもん…―
しかしよくバレないでいられるもんだ、千石は今日ほど自分のラッキーさに感謝したことはない。あれだけ三人で濃密な夜を過ごしたのに覚えているのは自分だけ…あの二人は寝ぼけながら自分の取った行動は全て夢だったとインプットしている。まさに好都合なのだが、こうも簡単に騙せるとは…
―ちょっと自分が怖いなオレ…―
でも誰も気づいていないことを自分だけが知っているというこの状況は決して悪くはないし変な優越感もある。別に脅す気はさらさらないが、二人のお互い夢だ夢だととぼける姿を面白可笑しく見られるだけでも儲けもんだ。ついついまた意地悪もしたくなる。

「あ〜〜、よーく寝た。おっ二人は相変わらず早いねえ」
今起きた振りをしてようやく昨夜のメンバーが現実で顔を合わせる。千石はもちろん飄々としていられるが、やはり南と東方は少し恥ずかしそうに目を合わそうとはしない。きっと今頃「夢」の内容でも思い出しているのだろう。
―あー可愛い!―
千石は早速そんな二人を突きたくなった。

「でも昨日変な夢見たな〜、まさかオレと南がっ…」

『ええっ!?』

ほぼ二人同時。

「…ダブルス組んで全国大会出場してるなんてね〜、ありえないなあ」

わざと二人を引っ掻き回すような発言で動揺を誘う。二人の分かりやすいリアクションがまた千石にとってはとても心地が良かった。冗談の言い甲斐があるってなもんだ。
「何々?二人ともそんなに驚いてー、もしかして二人も変な夢見ちゃったとか〜?」
そんな白々しい疑問をぶつけて、頬を赤く染めながら別に…と否定する二人の可愛い反応を楽しむ。千石のみが知っている真実!本当にある意味愉快で気持ちがいい。

「夢の話ですか?」
するとここで思わぬ人も会話に参戦してきた。昨日先輩三人に睡眠障害を受けた二年の室町だ。千石も意外な顔をしながらこの後輩に、先程二人にぶつけた質問を同じように問い掛けてみた。
「おはよう室町君、何々?室町君も昨日変な夢見ちゃったのかな?」

「おはようございます、………変な夢なんてものじゃありませんよ、最低最悪な夢でした。夢見が悪すぎておかげ様で朝寝坊ですよ…」

そんな丁寧な口調でも、彼の言葉にはどこか棘があって、千石はその棘が自分たち先輩組に向けられていることに気付いた。そして後輩の表情からは明らかに不快感が滲み出ている。
最低最悪と言わしめた、口にも出せそうになさそうなおぞましい夢…
千石はここで持ち前の勘の鋭さを働かせ、室町の「夢」の内容を読み取る。

―あっちゃー、何度か見られてたのか。まああれだけ大声出せば当然か…でも室町君も「夢」の仕業だと思っているみたい…助かった―

「そんなに悪い夢見たのか室町?…俺も相当ありえない夢見たけどな…」
「あっ俺も…かなりありえない夢を…」
南と東方も顔を暗くして爽やかな朝の風景が濁っていく。

「お二人もですか…さっき千石さんも変な夢見たって言ってましたよね、…ひょっとしてこの部屋…夢魔でも潜んでたんじゃないですか?だとしたら相当性質の悪い夢魔ですね」

室町の実に面白い言い回しに千石は妙に言い当てられたような…そんな感覚を覚えた。夢魔なんているとしたら間違いなくそれは自分。皆の全ての悪夢の元凶は自分。

―面白いこと言ってくれるじゃない、室町君…―

千石以外の三人が夢話で意気投合している時、千石は気付かれないようにニィと薄気味悪い笑みを浮かべた。

―そこまで言われたら是非、また期待に応えてあげたくなっちゃうじゃないか…―

不穏な企みが新たにこの部屋で生まれる…

夢魔は夢魔らしく…再び彼らに悪夢をお届けしようと。


END.



やっとこさ終わりです…猛スピードで書き上げました。
長々と書いちゃいましたが(特にエロ)やりすぎ感は否めません(笑)
なんと千石と南と東方の…俗に言う3Pですか?自分の萌えが導くままに
最後まで書いてみました。きっと苦手な方は避けてらっしゃるとは思いますが、
このSSは文章が書けなくなった管理人のリハビリ作です。(えー!)
なので理性などはかなぐり捨てて(笑)ある意味暴挙に出ました。
とにかく自分の自信回復を図りたくて形にしました。
ちゃんと私…文章が書けてますでしょうか…?
内容がマニアック過ぎましたが紛れもなく私の頭の中ですよ。
久々に攻めとしての千石が書けて楽しかったです。
むしろこのネタで萌えて下さった方は挙手していただきたい気持ちです(笑)
是非貴重なご意見を伺いたいです(笑)
ラストはホラーチックに終わらせましたが、ああいうの好きなんです。
千石以外が皆被害者な状況ですが、こういうのが内の黒い千石かな?
つくづく自分で南受け好きだな〜と思います(笑)ネタものも大好き!
南が喘いでたら何だっていいのか私は!(笑)←そこそこ相手にもこだわりますが。
多分一ヵ月後にこのSSを改めて見ると恥ずかしくて死にそうになるんだろうなあ、自分。
きっとここまで読まれている方は内容に耐えられた方だけだと思います…
本当に最後まで読んでくださってありがとうございました!
★水瀬央★

BACK