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*雪山合宿−2−* コータローのものを手で支えながらペロリと舌で愛撫し始める。その静かな表情で、でもどこかエロスを感じさせるような憂いの表情で、完璧に気持ちが入ってしまっているのかそれに没頭し始める。ピチャピチャと美味しそうに舌で味わって、何の躊躇もなくそれを銜え込みもする。 ―すっすげえ!!って俺感動してる場合かよ!!でも赤羽がフェラかよ…正直たまんないんだけどな…― コータローはただその行為を見つめるだけで、でもそれがまた興奮を誘い赤羽が自分のを銜え込んでいる図を眺めるだけでゾクゾクした。どっちみっち飢えていた身体だったから、これは願ってもない好機なのかもしれない。 ―けど今の俺は十秒でイく自信があるぜ…、あ…マジ気持ちいい……あーっ…― 勝手に夢心地のような気分に浸りながら、むしろ襲われている事実にもう少し危機感を持った方がいいと思われるが大して気にしていない。しかし赤羽が心底悪い奴でないと分かっているコータローだからこそこんな行為も軽々と受け入れられるのかもしれない。ちょっとそういう願望も持っていたから特に。 けれど何故このタイミングで手足を拘束してまでこんな行為に及ぶのか、それは謎のままだった。 ずるずると口腔で刺激を加えられ、喉に突き刺さりそうなほど奥まで飲み込む赤羽は淫らだけどどこか神秘的だった。人間でない、その事実はやはり大きいのかもしれない。揺れる触角が妙に艶かしい宇宙人にコータローは頬を火照らせながらちょっと腰を振ったりして、決して嫌がってはいない素振りも見せる。それよりも気持ち良さが増してものが破裂しそうなほど膨れ上がり、さすがの赤羽も苦しそうに口に含んでいる。 きっと今頃先走りが先端から滲み出して、それで赤羽の口内を汚しているだろう。たまに飲み込む仕草を見せている、そしてまた興奮する。口でのピストン運動をやめて、それを外側からまた舌でペロリと綺麗にするように赤羽は表面を滑らせている。 「…っ、なんでまたこんな…、事情くらい説明しろよ…、ん…」 もう限界がきているが、何故か赤羽はそれを最後の瞬間まで追い詰める事なく、今は優しく触れている。それが逆にもどかしい。実は愉しんでいるなんて口に出せやしないが。 けれど結局説明なしに赤羽は寸でのところでものを離し、そっとコータローの腰の上の辺りで膝立ちになる。そして今度は自分の衣服を取り外し始めた。 「おいっ、今度は何だよ」 そんな声が聞こえると、ちらりと赤羽はコータローを見る。相変わらず無機質な表情だけどやはりどこか寂しげだ。そして随分愛しい目で見つめられている…気がする。 だが赤羽に返事はなく、淡々と脱いで脚からその衣服を完全に取り剥がす。そしてまた恥ずかしげもなくコータローに跨り膝立ちになって自分の指を口に含んでいる。それだけを見てもコータローには何が何だかさっぱり分からなかった…がすぐに分かることとなる。 「…んっ……」 その濡らした指をそっと自分の後ろに回し、尾てい骨の辺りに忍ばせたかと思うと、少し湿ったような声が突然漏れてきた。思わずコータローも身体が震えるくらい驚いてしまったが、この相手の行為の意味を悟ったとき、また期待と不安が入り混じった複雑な感情が沸き起こる。こんなこと一方的にされてしまっていいのかという疑問もあるし、こんなことをする赤羽の目的も見えない。 「…なにやってんだよ?自分で指入れてんのか?」 「………っ」 だがまた返事はなく、まるで作業のように行為は進められていくけど赤羽の表情は決して固まったものではない。今の自分の状況を少なくとも表情でコータローに示してはいる。赤羽が開いている太腿の間からもコータローの位置からならば見えない事もなく、結構激しく指を突き入れている模様だ。そして微かに反応を示す箇所を執拗に自分で攻め立てていることも分かる。 「お前一体どうしたんだ?我慢できなくなってこんなとこに俺を連れ込んだのかよ…しかもご丁寧に手足まで封じてくれてよっ、俺のはいつまで放っておくんだよ…放置プレイか?勘弁してくれ!」 もう思わず生唾でも飲み込んでしまう場面の連続でコータローも感覚がだんだん麻痺してくる。こんな非現実的な事態にもポジティブに受け止めている辺り図太い精神と鋼のような強さを持ち合わせているのがよく分かる。赤羽の斜め上からの視線は相変わらず官能的で少し切なげだ。 そんな催促のようなコータローの発言には少し反応したようで、また指の出し入れのスピードが上がっている。ずぶずぶと二本の指が性急に赤羽の感度を上げている。ピクッと跳ねるように身体が動くと、熱く湿った吐息が吐き出される。随分顔も紅潮して自然と瞳も涙目だ。とろりと赤羽自身が溶けているようにも感じる。 「いつ解放してくれるんだよっ」 「……あと少しだ…」 珍しく返事が返ってきたと思った直後、赤羽は指を引き抜きもう辛抱堪らないといった表情でコータロー自身の先端を自分の指で広げた秘所に宛がう。 「おっお前が自分でそれ入れんのかよ…っ」 少し呼吸を整えて、コータローと目を合わせた後に赤羽は腰を落として自ら男のそれを突き刺していく。痛みのせいなのか快感を得ているせいなのか…顔を歪ませながらも行為は止めないしゆっくりにもならなかった。ただ早く繋げたくて焦りが見えるくらい。 「はっ…はあっ…」 「んっ!!すげっっ……きつっ」 「はぁっ……ああっっ!」 全てを自身の奥まで埋め込んで大きな嬌声を上げた赤羽、コータローも突然振って湧いたこの事態に最初は戸惑っていたけれど、ここまでくれば楽しんだもん勝ちだと…今は雄の欲求に正直にいてたい。視線を合わせるだけで互いに欲情しているのか、赤羽はまた躊躇なく自分の身体を上下に揺らし、何度も抜き差しを行っている。その度にいつもなら考えられないような喘ぎを漏らして、額から汗が流れ顎からコータローの身体にポタポタと零している。性器からも同じように液体が零れている。 ―なっなんだこれっ!?マジかよこれは!!赤羽が俺の上に乗っかって自分で挿れて腰振って喘いでるぜ?…やべっ…― 目の前に広がるあられもない赤羽の姿は、何の決定権も与えられていない拘束されたコータローにもクルものがあって、またその低音で色気のある声で喘がれて、どうにか参加したくてコータローも不自由な身体で懸命に腰を振る。もっと突き立ててやろうと協力してやる、と言えば聞こえはいいが、ただ単に快楽を得たいから行っているだけだった。 こんな喰らえるだけ喰らいつかれて、自分だけ置いてけぼりとは随分酷なことをする。さすが宇宙人だけあってかあそこの具合も絶妙でそんな風に扱かれるたびに精を絞り取られそうだった。何とか日々の早漏を隠してはいるが、これだけ派手に動かれては太刀打ちできない。とんだあばずれだ。 「いい声で啼いてるなっ、さっとイけよ!」 そんな暴言を吐くと、今度は抵抗するかのように動作がゆっくりとなり、そしてそっと身体をこちら側に倒してくる。一瞬抜けるか?とそっちの心配をしてしまったコータローだったが、上手く中に銜え込ませたまま赤羽はコータローの顔の至近距離までやってきた。頬を撫でるように触れられて、少しこそばゆい。 「エロい奴だな…、そんなに俺のこと好きかよ」 「………好きだ」 この至近距離での囁くような素直な赤羽の返答にゾクリとまた快感が走ったコータロー、何でこんなぶっちゃけてるのかは知らなかったが、もうまるで天下でも取ったような優越感に浸り、あの赤羽が自分に惚れ込んで身体も繋がっていると思うとこんな快楽はなかった。 こいつの全ては自分のものだ。 誰のものでもない、自分だけが独占していいのだ。 そう口にした訳でもない、けれど肯定するかのように赤羽はそっと唇を重ねてきて、気を良くしたコータローもそれに応じてやる。もう何もかもが快楽に直結する、こんな啄ばむような優しいキスでさえ情欲を生み出す。そしてやっぱり耐えられなくなってより濃いものを求めるのだ、そして赤羽もそれを拒まない。 こうなってくれば手足が動かないのが何よりも苦痛だった、もっと快楽を得たいのに全て赤羽からのアプローチのみ、もっと一心不乱に腰を動かして何度も何度でも相手の身体を貫いて獣のようなセックスがしたい。 俺のものだ。 俺のものだ。 そう感じる度に強く思う。 また腰を振って動き始めた赤羽にタイミングを合わせてコータローもより深くを目指す。逃げやしないからいい加減この手足を解いてくれと願うが赤羽は一向にその気配を見せない。 「おいっ、もうこれ外せよ!逃げねーよっっ」 「あっ…ああっ、………ダメだ…、んっっ!」 「何でだよっっっ!!!畜生〜っ、俺にもヤらせろよっっ、もっと気持ちよくしてやるぜっ?」 「…ありがとうっ、…ん、しかし…これで充分だっ……っ!」 「何がっっ!!」 もうそろそろ行為を終わらせる気なのか、視線も虚ろとなってきた赤羽は尚も自慰行為のようなセックスは止めようとはせず、自分を追い込むように快楽だけを満たして、それから果てた。その瞬間の締め付けにコータローも我慢できなくなって赤羽の中に精を流し込む。 そしてようやくこの行為は終わった。 「ハアッ…ハアッ…」 「はっ…はあ…はあ…」 しばらくは気持ちを静める為か繋がったままジッと身動きを取らなかった二人。どちらにしてもコータローから解くことは出来ず、次の赤羽の行動を待つ。もし二回目があるのならその時こそ手足を自由にしてから臨みたい、こんなもどかしい思いをしながら気持ちよくイかされるのは一度だけでいい。 すると少々名残惜しげだった赤羽はようやく身体をコータローから離す。そしてまたあの切なそうな顔でコータローにキスを落とした。何もかも一方的だ。 「おい…もう終わりか?」 「…………終わりだ」 「チェッ!じゃあいい加減これを外せっ」 「…………すまないと思っている、こんな強引な真似をして…」 だがまだ外してもらえない、しかしようやく赤羽は理由を話す気になったのかポツポツと事情を説明し始めた。コータローは仕方がないので黙ってそれを聞いてやる…つもりだったが到底黙ってはいられない性分だった。 「強引だって自覚はあったんだなあ〜、唐突過ぎるぜお前」 「……………我々の惑星にも掟はある、まず自分と言う存在がその惑星の住人に知られてはいけないという掟」 「…?宇宙人のことかよ、まあお前ならあり得ない話じゃねぇとは思うから大して気にする必要はないと思うぜっ」 「そういう訳にはいかない、よりにもよって俺はお前に気付かれてしまった…」 「あぁ?だからこんなことしたのか?別に気持ちよかったからいいけどよ…、ああもういい加減この実験台の上のようなとこから解放しろよ!もうさっさと旅館に帰ろうぜ…ちょっと疲れた」 もううんざりの表情のコータローは用は済んだだろと言わんばかりに楽観的だ、しかし赤羽の話はまだ終わってはいなかった。 「……もう俺はあの場所に帰ることは出来ない、もう迎えが来ている…行かなければならない、お前の身体は責任を持って元の場所へ戻そう」 「…はあっ!?帰れないだと???ちょっと待てよ!迎えってまさかお前っっ」 そしてコータローはようやくずっと赤羽が寂しげな目をしていた訳に気付く、もうすぐ別れが来ることを知っていたからあんな目をしていたのだ。 「どうしても…、帰る前にどうしても…君の温もりが得たかった、愛しているといった言葉は偽りじゃない、どうしても別れが来る前に………お前と」 「何だよその悪すぎる冗談はよっっ!!ふざけんな!!お前があの場所以外どこへ帰る気なんだよ!!ていうか盤戸はどうすんだよ!!!盤戸スパイダーズはっ!!!」 「約束を果たせなくて…本当にすまない、どうかいつまでも元気で………」 これこそ悪い夢だろう!?とコータローはいつの間にか衣服が整えられた赤羽の後方に眩しく輝く光を見る。あれがきっと赤羽の言う「迎え」なのだろう。それを目の当たりにして寒気がしたコータローは思わず飛び起きた。手足の枷はいつの間にか消えている。 「バカ言えよ冗談じゃねぇ!!どこにいく気だ赤羽ーーー!!!来年こそは…来年こそはって…約束しただろうーーー!!!行くなっっっ」 しかしコータローが手を伸ばしても、もう赤羽には届かなかった。 「……今までありがとう、そして…………さようなら」 そんな別れの言葉は眩い光の中から赤羽は告げる、そこはもう地球の住民には触れられない彼らの聖域。赤羽は見えなくなる前にそっと口元に笑みを浮かべるが、それがコータローに届いていたかは定かではなかった、ただひたすら手を伸ばして自分の名を叫び行くなと連呼するコータローの姿がいつまでも瞳に焼き付いていた。 「行くな赤羽っっ!!行くな〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!」 「うああああああーーーーーー」 そしてコータローは尚も叫びながら、赤羽の姿を追うため手を伸ばし身体を起こす。 するとそこは… 「うおっっ!!ビックリしたー、なんだコータローやっと起きたと思ったら夢でうなされてたのか〜?」 「急に叫ばないでくださいよ、ビックリするじゃないですか!」 「お前以外は皆もう起きてるぞ〜寝すぎ寝すぎ」 「………え?」 そしてコータローは現実に帰って来た。しっかりと目を開けてみれば確かに今自分がいる場所は旅館の大部屋、いつもの良く見知った部員達もいる。昨日就寝してから何事もないような他愛もない会話の数々、思わずコータローはホッと胸を撫で下ろした。 がしかし、慌てて窓側の一つしかない布団を確認するとそこには赤羽の姿はなかった。またドキリと胸が締め付けられそうになり嫌な予感がする。 「なあおい、赤羽は?赤羽どこいった?」 いつになく真剣な表情で部屋にいる部員達に赤羽のことを尋ねる、今この部屋には赤羽はいない。 「ああ赤羽なー、俺が起きたときには既にいなかったんだよなー」 「俺も見てないっすねー、そういえば」 「あ…本当だ…、赤羽いないな、お前見たか?」 「いいや、自分一番最初に起きましたけどそういえば姿なかったです」 誰も朝になって赤羽を目撃していない…たったそれだけでコータローは血の気が引いた。否が応でも思い起こされる夢だとばかり思っていた宇宙船の中での出来事。 起きたままの姿で慌てて身体を起こし、もう何も考えられず一目散にノンビリなどしてられないと部屋を飛び出そうとする。そんな必死な姿に部員達も驚いていた。 「どっどうしたんだ、コータロー?」 「コータローさん?」 しかし止まる様子もなく、やはりあれは現実だったのかと恐怖を感じて、もしそうだったとしたら外を探しても赤羽の姿は見つけられないことは分かっていたがジッとしていられなかった。まさか…まさか…と神にも縋るような気持ちでコータローはドアに手を掛ける。 ―赤羽っ!マジでいなくなっちまったのかっっ!!??― ガラッとドアを開けてそのまま部屋の出入り口から廊下に駆け出そうとしたところ… 「…ん?コータロー、起きたのか?おはよう…」 何と唐突にさっぱりした様子で浴衣姿の赤羽が目の前に現れた!!! 「っっっっ!!!!」 もうあまりの突然の登場に言葉を軽く失ったコータローはその場に立ち尽くしてしまう。確かに今目の前にいるのはれっきとしたあの赤羽だ。 「あ、赤羽さんお帰りなさい、朝から温泉ですか〜?」 「あー俺も入ってこようかなー」 「ああ、とても気持ちが良かったよ」 するとこんな平凡な会話が交わされて、謎が全て解けたコータローはもう怒りに任せてキれるしかなかった。 「テメーこの赤羽ーーー!!!」 「っ!?…どうしたんだ突然…」 …が、今度はコータローの気が持たず、ケンカを吹っ掛けたのはいいがもう先が続かず、一転黙り込んでさっさと部屋に入りたがっている赤羽を通してやる。それから力が抜けたのかコータローはその場でへなへなとしゃがみ込んだ。思わず頭を抱えて、気を落ち着かせているようだ。 「んー?どうしたんだコータロー?まだ寝惚けてんのかー?よーしじゃあ俺らも風呂行く準備するか!」 「賛成ー!あー赤羽さん先に一人だけずるい!」 「随分早くに目が覚めてしまってな、どうやら外泊でリズムが狂ってしまったらしい…」 そんな自分を置いてきぼりにするような楽しそうな会話が聞こえてくる。 でも皆コータローはまだ寝惚けていると思ってくれていたのは本人にとっては好都合だった。 何故ならその時コータローは… 「…良かった、本当に良かった……っ」 頬に一筋の涙を伝わせていたから。 END. |